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相続で共有になった実家は、遺産分割の前なら、協議で単独取得や代償分割に組み直すのが近道です。分割後の共有は、持分の売買・贈与、全員での売却、分筆、共有物分割請求で解消します。2023年4月施行の民法改正で、所在不明の共有者の持分を取得・譲渡する裁判手続もできました。
この記事では、民法の条文と法務省・裁判所・国税庁の資料をもとに、すでに共有になった実家の解消方法を整理します。
- いまの共有が「遺産共有」か「共有」かの見分け方と、手続の違い
- 5つの解消方法の比較と、選ぶ順番
- 共有物分割請求で裁判所が選ぶ分割方法と、訴えの手数料
- 連絡がつかない共有者がいるときの裁判手続と費用
- 登録免許税・贈与税・譲渡所得の違いと、前提つきの計算例
1. 共有名義の解消は「いまの共有の種類」の確認から
同じ「兄弟の共有」でも、遺産分割が済んでいるかどうかで、使う手続と裁判所が変わります。最初にここを確かめます。
遺産共有と、遺産分割後の共有の違い
親が亡くなり、相続人が話し合う前の実家は、相続人全員の「遺産共有」です。法務省は、遺産共有を遺産分割で速やかに解消されるべき暫定的なものと説明しています。
一方、遺産分割協議で「3人で3分の1ずつ持つ」と決めた後は、通常の共有(物権共有とも呼ばれます)です。こちらは民法の共有の規定で解消します。
| いまの状態 | 見分け方 | 解消の手続 | 話し合えないときの裁判所 |
|---|---|---|---|
| 遺産共有 | 遺産分割協議書がない。登記が親名義のままのことも多い | 遺産分割協議・調停・審判 | 家庭裁判所 |
| 遺産分割後の共有 | 協議書や調停で持分を決め、その内容で登記した | 持分の売買、全員での売却、共有物分割など | 地方裁判所など(共有物分割訴訟) |
| 両方が混ざった共有 | 共有者の1人が亡くなり、その持分がまだ分割されていない | 原則は別々。相続開始から10年後は一括の道もある | 地方裁判所など(民法258条の2) |
登記事項証明書に「相続」を原因とする共有が載っていても、それだけで遺産分割済みとは限りません。法定相続分のとおりに共有で登記しただけのこともあるためです。協議書の有無も合わせて確かめます。
遺産分割の前なら、協議で組み直すのが近道
まだ遺産分割をしていないなら、共有者の1人が単独で取得し、ほかの相続人に代償金を払う形にできます。この場合の登録免許税は相続の税率(0.4%)で、持分を後から買い取るより軽く済みます。
分け方の比べ方は相続人が複数いるときの実家の分け方、協議書の書き方は遺産分割協議書と実家で扱っています。この記事では、分割後に共有になった実家を中心に説明します。
共有のまま放置したときに起きること
- 共有者が亡くなると、その持分がさらに相続され、話し合う相手が増える
- 管理費や固定資産税を誰が持つかで、負担の偏りが生じやすい
- 売却や建替えのように全員の同意が要る場面で、1人の反対や不在で止まる
民法253条は、各共有者が持分に応じて管理の費用や負担を負うと定めています。共有者が1年以内にこの負担を果たさないときは、他の共有者が相当の償金を払ってその持分を取得できます(同条2項)。
2. 共有を解消する5つの方法|比較と選ぶ順番
遺産分割後の共有を解消する方法は、大きく5つです。全員の合意が要るか、誰が税金を負担するかで性格が分かれます。
| 方法 | 全員の合意 | 主な税金 | 向いている場面 |
|---|---|---|---|
| 持分の売買 | 売る人と買う人の合意 | 売った人の譲渡所得、買った人の登録免許税 | 住み続けたい共有者に資金がある |
| 持分の贈与・放棄 | 渡す人の意思(放棄は単独の意思表示) | 受け取った人の贈与税 | 持分が小さい、または価値が低い |
| 全員で売却 | 必要 | 各共有者の譲渡所得 | 誰も住まない、遠方に住んでいる |
| 分筆して分ける | 原則必要(分筆の登記は持分の過半数で申請可) | 持分どおりなら譲渡はなかったものとされる | 土地が広く、分けても使える形になる |
| 共有物分割請求 | 不要(裁判所が決める) | 分割方法による | 話し合いが行き詰まった |
持分の放棄は、民法255条にもとづく方法です。共有者の1人が持分を放棄すると、その持分は他の共有者に帰属します。ただし税金の扱いに注意が要ります(3章)。
選ぶ順番の目安
- 住み続けたい、持ち続けたい共有者がいるか(いれば持分の売買・贈与)
- 誰も使わないなら、売る時期と最低価格をそろえられるか(そろえば全員で売却)
- 土地が広いなら、分けても建物が建てられる形か(建てられれば分筆)
- どれも合意できない、連絡がつかない共有者がいる(裁判所の手続)
裁判所の手続は、時間と費用がかかるうえ、結論を自分で選べません。まずは1〜3の話し合いで解消できないかを探るのが一般的な順番です。
3. 持分を買い取る・贈与する|共有者の1人に集める

実家に住む人や、将来使う予定の人に持分を集める方法です。名義が1人になれば、売却も建替えも自分の判断で進められます。
持分の売買|価格の決め方と登記
持分の価格は、当事者の合意で決めます。ただし、著しく低い価額で譲り受けると、時価との差額が贈与とみなされます(国税庁No.4423)。不動産会社の査定や不動産鑑定を参考に、価格の根拠を残しておきます。
代金を払ったら、売買を原因とする持分移転の登記をします。登録免許税は土地が1,000分の20、建物も1,000分の20です。土地は、令和11年3月31日までの登記なら1,000分の15に軽減されます(国税庁No.7191)。
売った側には譲渡所得がかかる
持分を売って利益が出た共有者は、分離課税の譲渡所得として確定申告をします。相続で取得した持分の取得費は、親が買ったときの代金などを基に計算します(国税庁No.3270)。
売った年の1月1日時点で所有期間が5年を超えれば長期譲渡所得です。税率は所得税15%・住民税5%で、別に復興特別所得税(所得税額の2.1%)がかかります(国税庁No.3208)。
贈与にすると、受け取った側に贈与税
持分を無償で渡すと、受け取った人に贈与税がかかります。1年間にもらった財産の合計から基礎控除110万円を引いた残りが課税対象です(国税庁No.4402)。
兄弟姉妹の間の贈与には「一般税率」を使います(国税庁No.4408)。たとえば、2人から受け取った持分の評価額が計1,800万円なら、次のとおりです。
(1,800万円-110万円)×50%-250万円=595万円
評価額は、土地なら路線価などで求めた相続税評価額で、ここでは仮の数字です。贈与は、少額の持分を整理するときには使いやすい一方、価値の大きい持分では税負担が重くなります。
持分放棄は「贈与とみなす」扱いに注意
国税庁の相続税法基本通達9-12は、共有者の1人が持分を放棄したとき、他の共有者が持分に応じて贈与により取得したものとして扱うと定めています。放棄しても、贈与税の問題は消えません。
放棄による持分の移転も登記が必要です。手続と税額は、司法書士と税理士にあわせて確認しましょう。
4. 共有者全員で売却する|代金を持分で分ける

誰も住む予定がないなら、全員で売って代金を持分どおりに分ける方法が、もっとも単純です。売却そのものは全員の合意が必要ですが、売った後に共有が残りません。
売り出す前に共有者で決めておくこと
- 不動産会社との窓口になる人と、連絡のしかた
- 最低価格(これを下回るなら売らないライン)と、売り出しの期限
- 家財の処分、測量、解体などの費用を誰がいくら立て替えるか
- 代金から差し引く費用と、各自への振込の方法
取り決めは、日付を入れた書面にして全員で保管します。売買契約や決済には共有者全員の署名・押印や本人確認が必要になるため、遠方の共有者の日程も早めに押さえます。
査定は複数の会社から取ると、価格の幅をつかみやすくなります。共有者全員に同じ資料を共有すると、話が進めやすくなります。
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税金は各共有者が申告する
全員で売ったときの譲渡所得は、共有者がそれぞれ自分の持分について計算し、申告します。代表者が代金をまとめて受け取る場合も、持分ごとの金額を明細に残しておきます。
相続した空き家を売ったときの3,000万円特別控除は、人数で上限が変わります(国税庁No.3306)。令和6年1月1日以後の譲渡で、家と敷地を相続した相続人が3人以上なら、1人2,000万円までです。売却期限や建築時期の要件は相続した空き家の3,000万円特別控除で確認してください。
一部の共有者が売却に反対したとき
自分の持分だけなら、他の共有者の同意なく売ることもできます。ただし法務省は、持分を売って得る代金より、不動産全体を売って持分で分ける代金のほうが高額になりやすいと説明しています。
持分だけを買った人は、ほかの共有者と共有関係を持つことになります。親族の関係にも影響するため、持分だけの売却は、全員での売却や買取りの話し合いを尽くしてから検討しましょう。売却の流れは相続した実家の売却チェックリストにまとめています。
5. 分筆して単独名義に分ける|土地が広いときの選択肢

分筆とは、登記上1つの土地(1筆)を複数に分ける登記です。分けた土地をそれぞれの共有者が単独で持てば、共有が解消します。
分筆から単独名義までの流れ
- 土地家屋調査士が資料を調べ、隣地や道路との境界を立会いで確認する
- 土地を測量し、分ける線と面積を決める
- 分筆の登記を申請する(各区画は、まだ全員の共有のまま)
- 共有物分割として、区画ごとに各自の単独名義へ持分を移す登記をする
法務省の改正資料によると、共有土地の分筆の登記は、共有者の持分の過半数で申請できます。ただし、どの区画を誰が取るかは、共有物分割としての合意が必要です。
持分どおりに分ければ、譲渡はなかったものとされる
所得税基本通達33-1の7は、1つの共有地を持分に応じて現物分割したとき、その分割による土地の譲渡はなかったものとして扱うと定めています。面積の比が持分と違っても、価額の比がおおむね持分どおりならこれに当たります。
一方、別々の不動産を取り替える分け方は扱いが違います。国税庁の質疑応答事例では、甲乙で共有する家と土地と、別の土地を1つずつ取り合った例を、持分の交換として課税関係が生じるとしています。
登録免許税は、共有物の分割による移転のうち、もとの持分に応じた価額の部分が1,000分の4です(法務省「登録免許税の計算」)。
費用の目安|土地家屋調査士の報酬アンケート
日本土地家屋調査士会連合会の2022年度アンケートでは、264㎡の宅地を2筆に分ける分筆登記の報酬は、全国平均42万2,909円、中央値40万3,765円(税抜)でした。
この金額は、隣接地5筆の調査や境界標の設置などを含む設定での数字です。境界確認の相手が多い、資料がそろわないといった事情で増えることがあり、交通費や境界杭などの実費は別にかかります。
分けた区画が狭くなりすぎたり、道路に接しなくなったりすると、建物を建てにくい土地になるおそれがあります。分ける線を決める前に、市区町村の建築の窓口や不動産会社にも使い道を確認しましょう。
6. 共有物分割請求|話し合いがまとまらないときの裁判手続

民法256条により、各共有者はいつでも共有物の分割を請求できます。5年を超えない期間で「分割しない」と約束することもできますが、その期間が過ぎれば請求できます。
協議が調わないとき、または協議をすることができないときは、裁判所に分割を請求できます(民法258条1項)。
裁判所が選ぶ3つの分割方法
改正後の民法258条は、分割の方法を次の順で定めています。法務省は、賠償分割を明文化し、競売の検討順序を明確にしたと説明しています。
| 分割方法 | 内容 | 実家で起こり得ること |
|---|---|---|
| 現物分割(258条2項1号) | 持分に応じて物理的に分ける | 土地を分筆して分ける。建物があると難しい |
| 賠償分割(同項2号) | 1人(または数人)が取得し、他の共有者に代償金を払う | 住んでいる共有者が取得し、ほかの共有者に払う |
| 競売分割(同条3項) | 競売で売り、代金を持分で分ける | 上の2つができない、または価値が大きく下がるとき |
裁判所は、分割の裁判のなかで、金銭の支払いや登記手続などの給付を命じることもできます(同条4項)。代償金の支払いと名義の移転を、判決のなかで一緒に実現するための規定です。
遺産共有が残っているときと「10年」の例外
共有物が遺産分割をすべき相続財産に当たるときは、共有物分割の手続では分けられません(民法258条の2第1項)。この場合は家庭裁判所の遺産分割で解消します。
例外は、通常の共有持分と遺産共有の持分が混ざり、相続開始から10年を過ぎた場合です。遺産共有の持分も含め、地方裁判所の共有物分割でまとめて解消できます(同条2項)。
ただし、家庭裁判所に遺産分割の請求があり、相続人が異議を申し出たときは、この方法は使えません。異議は、裁判所から通知を受けた日から2か月以内に申し出ます(同条3項)。
民法904条の3により、相続開始から10年を過ぎた遺産分割は、原則として法定相続分を基準に行います。改正前に始まった相続には猶予があり、法務省の資料では令和10年3月31日の経過時が基準になる場合があります。
訴えの手数料|令和8年5月21日から書面と電子で額が違う
訴えの手数料は、訴訟の目的の価額(訴額)に応じて、民事訴訟費用等に関する法律で決まります。裁判所の手数料額早見表(令和8年9月15日改訂)の一部は次のとおりです。
| 訴額 | 書面で申し立てる場合 | 電子で申し立てる場合 |
|---|---|---|
| 300万円 | 2万2,500円 | 2万1,400円 |
| 500万円 | 3万2,500円 | 3万1,400円 |
| 1,000万円 | 5万2,500円 | 5万1,400円 |
この額は、令和8年5月21日以後に提起する民事訴訟のものです。被告が2人以上なら、被告の数から1を引いた数に2,000円を掛けた額が加わります。共有物分割の訴額の算定は事案で異なるため、申し立てる裁判所や弁護士に確認してください。
手数料のほかに、郵便料、不動産鑑定の費用、弁護士費用がかかることがあります。弁護士費用は事務所ごとに違います。
7. 連絡がつかない共有者がいるとき|所在等不明共有者の手続
共有者の住所が分からない、誰が共有者か分からない、という場合も、2023年4月1日施行の改正で裁判所の手続が用意されました。対象は不動産の共有です。
持分を取得する手続(民法262条の2)
他の共有者を知ることができない、または所在が分からないとき、裁判所は申し立てた共有者に、その持分を取得させる裁判ができます。申立人は、裁判所が定める金額を供託します。
法務省の資料によると、裁判の前に3か月以上の異議届出期間と公告があります。不明な共有者が名乗り出て所在が分かれば、申立ては却下されます。
第三者へ売るための権限をもらう手続(民法262条の3)
不動産全体を第三者に売りたいときは、不明な共有者の持分を譲渡する権限を、裁判所から与えてもらう方法もあります。ほかの共有者全員が、同じ相手に持分全部を売ることが条件です。
法務省の資料では、権限にもとづく譲渡は、裁判の確定から原則2か月以内に行う必要があります。1人でも売却を拒む共有者がいると、この方法は使えません。
申立ての費用と必要書類|東京地方裁判所の案内
申立先は、不動産の所在地を管轄する地方裁判所です。どちらの手続も、不明な共有者の持分が遺産分割をすべき相続財産なら、相続開始から10年を過ぎていることが必要です。
| 項目 | 持分取得 | 持分譲渡の権限付与 |
|---|---|---|
| 申立手数料(収入印紙) | 1,000円×対象の持分の数×申立人の数 | 1,000円×対象の持分の数 |
| 予納金(官報公告費用) | 7,134円から | 7,134円から |
| 郵便切手 | 6,000円分(共有者等が1人増えるごとに2,440円分を追加) | 同左 |
| 供託する金額 | 持分の時価相当額を考慮して裁判所が定める | 不動産全体の時価と持分の割合などを考慮して裁判所が定める |
出典:東京地方裁判所の各手続の説明書(確認日:2026-10-02)。他の地方裁判所では郵便料などが異なることがあります。
添付書類には、登記事項証明書のほか、鑑定書や固定資産税評価証明書など価格の資料、共有者の探索に関する報告書があります。住民票や返送された郵便物など、所在が分からないことを裏付ける資料も求められます。
返事をしない共有者がいるとき
所在は分かるのに、何度連絡しても賛否を答えない共有者もいます。この場合は、相当の期間を定めて賛否を催告し、裁判所の決定を得ます。すると、その人を除いた持分の過半数で管理の事項を決められます(民法252条2項2号)。
ただし、この手続で決められるのは「管理」の範囲です。売却や建物の取壊しのような変更には使えないため、解消そのものは別の方法で進めます。
8. 費用と税金を計算例で比べる|登録免許税の違い
同じ「長男に名義を集める」でも、どの方法で移すかで登録免許税が変わります。前提を置いて試算します。
計算例|兄弟3人の共有を長男1人に集める
前提:兄弟3人が実家を3分の1ずつ共有しています。固定資産課税台帳の価格は、土地2,400万円、建物300万円とします。長男が、次男と長女の持分(あわせて3分の2)を取得します。
| 移し方 | 土地(1,600万円分) | 建物(200万円分) | 登録免許税の合計 |
|---|---|---|---|
| 持分の売買 | 1.5%で24万円 | 2%で4万円 | 28万円 |
| 持分の贈与 | 2%で32万円 | 2%で4万円 | 36万円 |
| (参考)遺産分割前に長男が単独で相続 | 土地全体2,400万円×0.4%=9万6,000円 | 建物全体300万円×0.4%=1万2,000円 | 10万8,000円 |
当サイトの試算です。税率は国税庁No.7191によります。土地の売買の1.5%は、令和11年3月31日までに登記を受ける場合の軽減税率です。持分の放棄は、売買・相続・共有物分割のいずれにも当たらないため、税額表の「その他」と同じ2%で計算されると考えられます。区分は司法書士に確認してください。
法務省の案内では、課税標準の1,000円未満と、税額の100円未満は切り捨てます。また国税庁No.7191によると、相続登記には価額100万円以下の土地の免税措置(令和9年3月31日まで)があります。
売買の場合は、次男と長女に譲渡所得の申告が生じます。贈与の場合は、長男に贈与税がかかります(3章の例で595万円)。登録免許税だけでなく、税金全体で比べることが大切です。
そのほかにかかる費用の一覧
| 費用 | かかる場面 | 金額の目安と出典 |
|---|---|---|
| 司法書士の報酬 | 持分移転・共有物分割の登記 | 事務所ごとに異なる。見積りで確認 |
| 測量・分筆の報酬 | 分筆で分けるとき | 2筆への分筆で平均約42万円(税抜、日本土地家屋調査士会連合会の2022年度アンケート) |
| 訴えの手数料 | 共有物分割訴訟 | 訴額500万円なら書面3万2,500円(裁判所の早見表) |
| 所在等不明共有者の申立て | 連絡がつかない共有者がいるとき | 印紙1,000円から、予納金7,134円から、切手6,000円分。ほかに供託金(東京地裁) |
| 不動産鑑定・査定 | 持分の価格や代償金を決めるとき | 依頼先や内容により異なる。見積りで確認 |
9. 共有のまま当面持つときのルールと、相談先
すぐに解消できないときは、共有のまま管理するルールを決めておきます。2023年4月施行の改正で、共有物の管理のルールが整理されました。
何を誰の同意で決められるか
雨漏りの補修のような保存行為は、各共有者が単独でできます(民法252条5項)。使う人を決めることなどの管理は、持分の価格の過半数で決めます(同条1項)。
形や用途を大きく変える変更は、共有者全員の同意が必要です(民法251条1項)。法務省の資料は、外壁や屋上防水などの大規模修繕を、基本的に過半数で決められる軽微な変更の例に挙げています。
建物の賃貸は、3年以内なら持分の過半数で決められます(民法252条4項)。ただし、普通借家は扱いが異なります。詳しくは相続した実家を賃貸に出す前の確認事項をご覧ください。
住んでいる共有者と、費用を払わない共有者
共有の実家を使っている共有者は、別段の合意がなければ、自分の持分を超える使用の対価を他の共有者に償還する義務を負います(民法249条2項)。無償で住んでもらうなら、その合意を書面にします。
固定資産税の納税通知を誰が受け取り、共有者でどう分担するかも決めておきます。考え方は実家の固定資産税は誰が払うかで確認できます。
相談先の使い分け
| 相談したいこと | 相談先 |
|---|---|
| 持分移転・共有物分割の登記、必要書類 | 法務局の登記手続案内、司法書士 |
| 分筆、境界の確認、測量 | 土地家屋調査士 |
| 譲渡所得、贈与税、代償金の税務 | 税務署、税理士 |
| 共有物分割請求、所在等不明共有者の申立て、交渉 | 弁護士、地方裁判所の手続案内 |
| 全員での売却、査定 | 不動産会社 |
当サイトの市区ページでは、実家の所在地を管轄する法務局と家庭裁判所を整理しています。共有物分割や所在等不明共有者の申立ては、不動産の所在地の地方裁判所です。
| 市区 | 登記の管轄(法務局) | 遺産分割前の相談(家庭裁判所) |
|---|---|---|
| 東京都大田区 | 東京法務局 城南出張所(03-3750-6651) | 東京家庭裁判所 本庁 |
| 神奈川県藤沢市 | 横浜地方法務局 湘南支局(0466-35-4620) | 横浜家庭裁判所 本庁 |
| 埼玉県越谷市 | さいたま地方法務局 越谷支局(048-966-1321) | さいたま家庭裁判所 越谷支部 |
出典:当サイトの各市区ページ(大田区は2026年9月21日確認の記載)。家庭裁判所は手続によって管轄が変わるため、各ページの説明もあわせて確認してください。
相談の前に、登記事項証明書、遺産分割協議書、固定資産税の課税明細書、共有者の連絡先をそろえておくと話が早く進みます。全員で売る方向が見えてきたら、査定を取って共有者に同じ資料を配りましょう。
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【関連】地域ごとの制度と相談先を調べる
管轄の法務局や、売却前に使える自治体の制度は、実家のある市区町村で違います。1都3県の情報は、都県別のガイドから確認できます。
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よくある質問
共有名義の実家は、共有者1人の判断で売れますか?
実家全体を売るには、共有者全員の合意が必要です。自分の持分だけなら単独で売れますが、法務省は全体を売って分けるほうが高額になりやすいと説明しています。まずは全員での売却や、持分の買取りを話し合いましょう。
共有名義を解消するとき、税金は誰にかかりますか?
持分を売った人には譲渡所得、無償で受け取った人には贈与税がかかります。持分の放棄も、他の共有者が贈与で取得したものとして扱われます。名義を移す人には登録免許税がかかり、売買は土地1.5%(令和11年3月31日まで)、贈与は2%です。
話し合いに応じない共有者がいる場合はどうなりますか?
共有物分割請求の訴えを地方裁判所などに起こせます。裁判所は、現物分割、1人が取得して代償金を払う賠償分割、競売の順で分割方法を判断します。遺産分割が済んでいない共有は、原則として家庭裁判所の遺産分割で扱います。
行方が分からない共有者がいても、共有を解消できますか?
2023年4月施行の改正で、裁判所の決定により不明な共有者の持分を取得する手続と、第三者へ譲渡する権限を得る手続ができました。申立先は不動産所在地の地方裁判所で、供託金が必要です。遺産共有なら相続開始から10年の経過が条件です。
分筆で分けると、税金はかかりますか?
1つの共有地を持分に応じて分けた場合は、所得税基本通達33-1の7により、土地の譲渡はなかったものとして扱われます。別々の不動産を取り替える分け方は、交換として課税関係が生じることがあります。分筆の登記や持分移転の登記費用は別にかかります。
まとめ
共有名義の解消は、いまの共有が遺産共有か、遺産分割後の共有かを見分けるところから始まります。遺産分割の前なら協議で単独取得に組み直し、分割後なら持分の売買・贈与、全員での売却、分筆を話し合います。
まとまらなければ共有物分割請求、連絡のつかない共有者がいれば所在等不明共有者の手続があります。どの方法も、登録免許税、譲渡所得、贈与税のかかり方が違います。
名義を移す前に、司法書士と税理士で税金全体を試算し、全員で売るなら査定を取って共有者に同じ資料を配りましょう。
一次情報・参考資料
- 法務省「民法等の一部を改正する法律 新旧対照条文」(PDF)民法249条・251条・252条・258条・258条の2・262条の2・262条の3・904条の3(確認日:2026-10-02)
- 法務省 日本法令外国語訳データベース「民法」253条・255条・256条(確認日:2026-10-02)
- 法務省民事局「令和3年民法・不動産登記法改正、相続土地国庫帰属法のポイント」(PDF)共有・遺産分割・所在等不明共有者の頁(令和8年4月版、確認日:2026-10-02)
- 東京地方裁判所「共有に関する事件、土地等の管理に関する事件」所在等不明共有者持分取得・持分譲渡の権限付与の説明書(確認日:2026-10-02)
- 裁判所「手数料額早見表」(PDF)(令和8年9月15日改訂、確認日:2026-10-02)
- 法務省「登録免許税の計算」(PDF)共有物の分割による移転の税率、端数処理(確認日:2026-10-02)
- 国税庁「No.7191 登録免許税の税額表」(令和8年4月1日現在法令等、確認日:2026-10-02)
- 国税庁「所得税基本通達 法第33条関係」33-1の7(確認日:2026-10-02)
- 国税庁 質疑応答事例「共有物の分割」(令和7年8月1日現在の法令・通達等、確認日:2026-10-02)
- 国税庁「相続税法基本通達 第9条関係」9-12(共有持分の放棄)(確認日:2026-10-02)
- 国税庁「No.4402 贈与税がかかる場合」、「No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)」(確認日:2026-10-02)
- 国税庁「No.4423 個人から著しく低い価額で財産を譲り受けたとき」(確認日:2026-10-02)
- 国税庁「No.3208 長期譲渡所得の税額の計算」、「No.3270 相続や贈与によって取得した土地・建物の取得費と取得の時期」(令和8年4月1日現在法令等、確認日:2026-10-02)
- 国税庁「No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」(令和8年4月1日現在法令等、確認日:2026-10-02)
- 日本土地家屋調査士会連合会「土地家屋調査士 報酬ガイド」(2022年度アンケート、PDF)(確認日:2026-10-02)
