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結論から言うと、実家じまいは7つの順番で進めます。家族の方針→相続人と名義の確認→貴重品と書類の確保→家財の仕分け→仏壇・お墓→家の処分→解約・届出です。
要点は2つです。相続放棄を考えている間は、家財を処分しないこと。解体や売却の契約は、補助金と税の特例を確かめてから結ぶことです。
この記事で分かること(法令・統計・国税庁・自治体の公式案内をもとに整理):
- 実家じまいの意味と、始めるタイミングによる違い
- 7つのステップと、相続後に動き出す期限の一覧
- 相続放棄を考えるときに、家財を処分してはいけない理由(民法921条)
- 家財の片付けを業者に頼むときの費用の内訳と、許可の確かめ方
- 売る・貸す・解体する・国庫に帰属させるの比べ方と、市区の解体補助金の例
- 遠方に住んでいても進めやすい段取りと、相談先の使い分け
1. 実家じまいとは|この記事での意味と、始めるタイミング
「実家じまい」は法律用語ではありません。当サイトでは、親が住んでいた家を、家財の整理から家の処分・解約まで含めて片づけることを指します。
親が元気なうちか、相続の後かで進め方が変わる
実家じまいを始めるきっかけは、大きく2つです。親が施設に入る・子と同居するときと、親が亡くなって相続したときです。
親が存命の間は、家も家財も親の財産です。何を残し、家をどうするかは親本人が決めます。売却の契約も、名義人である親が当事者になります。
相続の後は、家と家財は相続人のものになります。民法898条は、相続人が数人あるときは「相続財産は、その共有に属する」と定めています。兄弟がいれば、遺産分割が終わるまでは全員の財産です。一人の判断で処分を進めないことが出発点です。
データで見る|1都3県の空き家は約209万戸
総務省統計局の令和5年住宅・土地統計調査では、全国の空き家は900万2千戸で、空き家率は13.8%でした。いずれも過去最高です。
このうち、賃貸用・売却用・別荘などを除く空き家は385万6千戸です。統計上、転勤や入院などで住む人が長く不在の家などが入る区分で、相続後に使われていない実家もここに入りやすいと考えられます。一戸建ての空き家に限ると、この区分が80.9%を占めます。
都道府県別の付表から、当サイトの対象地域である1都3県を集計しました。
| 都県 | 空き家数 | 空き家率 | 賃貸・売却用等を除く空き家 | その率 |
|---|---|---|---|---|
| 東京都 | 89万7千戸 | 10.9% | 21万4千戸 | 2.6% |
| 神奈川県 | 46万7千戸 | 9.8% | 15万1千戸 | 3.2% |
| 埼玉県 | 33万戸 | 9.3% | 13万6千戸 | 3.8% |
| 千葉県 | 39万4千戸 | 12.3% | 15万9千戸 | 5.0% |
| 1都3県の合計 | 208万8千戸 | 10.6% | 66万戸 | 3.3% |
1都3県の「賃貸・売却用等を除く空き家」66万戸は、全国の約17%です。率は全国(5.9%)より低くても、戸数は少なくありません。
出典:総務省統計局「令和5年住宅・土地統計調査 住宅及び世帯に関する基本集計(確報集計)結果の概要」付表。標本調査に基づく推計値です。合計と率は当サイトが計算しました。
2. 実家じまいの順番|7つのステップと期限の一覧
実家じまいは、次の7ステップで進めます。
| 順番 | やること | 主な相手 |
|---|---|---|
| 1 | 家族で方針と役割を決める | 兄弟・親族 |
| 2 | 相続人と家の名義を確かめ、相続登記を準備する | 市区町村(戸籍)・法務局・司法書士 |
| 3 | 貴重品と書類を確保し、財産と借入れを把握する | 金融機関・家族 |
| 4 | 家財を仕分けて、譲る・売る・捨てる | 親族・市区町村・片付け業者 |
| 5 | 仏壇・お墓の引き継ぎ方を決める | 寺院・霊園・石材店 |
| 6 | 家を売る・貸す・解体する・国庫に帰属させる | 不動産会社・解体業者・法務局 |
| 7 | 電気・水道などを解約し、届出を済ませる | 各契約先・保険会社 |
3と4、4と5は並行して進められます。逆に、6の家の処分を先に決めると、書類や形見を探す時間がなくなります。片付けの日程が売却の都合で決まってしまうためです。
相続の後に動き出す期限
相続で実家じまいを始める場合は、法律や税の期限が同時に動きます。期限の短い順に並べます。
| 手続き | 期限 | 根拠 |
|---|---|---|
| 相続放棄・限定承認 | 相続の開始を知った時から3か月以内 | 民法915条、裁判所 |
| 準確定申告(親に申告が必要な所得があった場合) | 相続の開始を知った日の翌日から4か月以内 | 国税庁No.2022 |
| 相続税の申告(基礎控除を超える場合) | 死亡を知った日の翌日から10か月以内 | 国税庁No.4205 |
| 相続登記 | 取得を知った日から3年以内(令和6年4月1日より前の相続は令和9年3月31日まで) | 法務省 |
| 空き家の3,000万円控除 | 相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日まで、かつ令和9年12月31日までの売却 | 国税庁No.3306 |
| 固定資産税 | 毎年1月1日の所有者に課税 | 総務省 |
相続税の基礎控除は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」です。相続人が子2人なら4,200万円です。これを超えなければ、相続税の申告は原則として要りません。
3か月の期限は、家庭裁判所に申し立てれば延ばせる場合があります。財産を調べても判断できないときは、期限内に伸長の申立てを検討します。
3. 家族の方針を決め、相続人と名義を確かめる(ステップ1・2)
最初の話し合いでは、家をどうするかまで決めなくてかまいません。まず「誰が、何を、いつまでに」を決めます。
最初の話し合いで決めること
- 窓口役(業者や役所とやり取りする人)
- 費用の立替え方と、後で精算するときのルール
- 残したい物、形見として分けたい物の希望
- 家を残すか手放すかの大まかな方向
- 片付けを終えたい時期(3か月の期限や、税の期限との関係)
決めた内容はメモにして全員に共有し、領収書は窓口役がまとめて保管します。立替えた費用の精算は、売却代金から差し引くのか、その都度割るのかまで決めておくと、後のもめごとを防げます。
相続人と遺言書を確かめる
相続人は、親の出生から死亡までの戸籍で確定します。家族が知らない相続人が見つかることもあります。
遺言書があれば、家を誰が引き継ぐかが決まっていることがあります。遺言書の有無は、片付けを始める前に確かめておきます。
家の名義と相続登記|登録免許税の計算例
登記事項証明書を取り、土地と建物の名義を確かめます。祖父母の名義のまま、という実家も珍しくありません。
相続登記は令和6年4月1日から義務になりました。取得を知った日から3年以内に申請します。正当な理由なく怠ると、10万円以下の過料の対象です。
登録免許税は、相続の場合「不動産の価額×1,000分の4(0.4%)」です。価額には固定資産税評価額を使います。
| 前提 | 金額 |
|---|---|
| 土地の固定資産税評価額 | 1,200万円 |
| 建物の固定資産税評価額 | 200万円 |
| 登録免許税(1,400万円×0.4%) | 5万6,000円 |
このほか、司法書士に頼めば報酬がかかります。価額100万円以下の土地は、令和9年3月31日までの相続登記なら登録免許税がかかりません。この免税は土地だけで、建物は対象外です。
売却する場合も、通常は相続人の名義に登記してから売買の登記をします。売るつもりでも、登記の準備は早めに始めます。
4. 貴重品・書類を確保する|相続放棄を考えるなら処分しない(ステップ3)

家財の片付けより先に、貴重品と書類を探します。業者が入ってからでは、紙の書類はごみと一緒に運ばれかねません。
先に探す書類と貴重品
- 通帳・キャッシュカード・証券会社からの郵便物
- 実印・銀行印、印鑑登録証
- 権利証(登記識別情報)、固定資産税の納税通知書
- 生命保険・火災保険の証券、年金の通知
- ローン・カードの明細、借用書、保証人になった書類
- 遺言書、エンディングノート
- 土地の契約書、測量図、境界の資料、借地の契約書
郵便物は、財産と借入れの手がかりになります。届いた封書は捨てずに箱へまとめ、差出人の一覧を作っておくと漏れを防げます。
借入れがあるかもしれないとき|民法921条の「処分」に注意
親に借金がありそうなときは、相続放棄を検討します。このとき、家財の処分には特に注意が必要です。
民法921条は、次の場合に相続人は単純承認(すべてを引き継ぐこと)をしたものとみなす、と定めています。
一 相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき。ただし、保存行為及び第六百二条に定める期間を超えない賃貸をすることは、この限りでない。
同条2号は、3か月の期間内に限定承認も放棄もしなかったときも、単純承認とみなすと定めています。
つまり、家財を売ったり、価値のある物を捨てたりすると、相続放棄ができなくなるおそれがあります。建物の解体も同じです。
一方、雨漏りの応急処置のように、財産の価値を保つための「保存行為」は除かれています。どこまでが保存行為かは個別に判断されます。迷う作業は手を付ける前に、弁護士か司法書士に確かめます。
相続放棄は、親の最後の住所地の家庭裁判所に申し立てます。費用は申述人1人につき収入印紙800円分と、連絡用の郵便切手です。放棄すると、実家だけでなく預貯金も含めてすべて引き継ぎません。詳しくは相続放棄を考えるときの実家の扱いをご覧ください。
5. 家財を仕分けて片付ける|仏壇・お墓の扱いも(ステップ4・5)

書類の確保が済んだら、家財の仕分けに入ります。いきなり捨て始めず、部屋ごとに4つに分けると判断が速くなります。
「残す・譲る・売る・捨てる」の4つに分ける
- 残す:相続人の誰かが引き取る物、手続きで使う書類
- 譲る:親族や知人に形見として分ける物
- 売る:まだ使える家具・家電、骨董、貴金属
- 捨てる:使えない物、引き取り手のない物
価値のある物は、相続財産として遺産分割の対象です。高価な物を形見として持ち帰るときは、相続人の間で合意をとってからにします。
迷う物は「保留」の箱に入れ、期日を決めて見直します。全員が家に入れる日を設けると、「勝手に捨てた」という不満が出にくくなります。
家電4品目と粗大ごみは、出し方が決まっている
テレビ、エアコン、冷蔵庫・冷凍庫、洗濯機・衣類乾燥機の4品目は、家電リサイクル法の対象です。家電小売店などが引き取り、メーカーがリサイクルする仕組みです。
環境省は、引き渡すときに「リサイクル料金」と「収集運搬料金」が必要になると案内しています。料金を払うと家電リサイクル券が発行され、メーカーへ渡ったかを番号で確かめられます。
家具などの粗大ごみは、実家のある市区町村のルールで出します。出し方は自治体ごとに違うので、片付けを始める前に確かめます。遠方から通う場合は、帰省の日程と収集日を合わせて計画します。
まだ使える物を売るときは、古物商の許可を持つリユースショップなどに買取を頼みます。売った物と金額は記録しておき、遺産分割の際に共有します。
写真や手紙は、急がずに分ける
写真・手紙・日記は、捨てるかどうかの判断に時間がかかります。片付けの最後に回し、箱にまとめて持ち帰る方法もあります。
スキャンしてデータで残せば、兄弟全員が同じものを持てます。気持ちの整理には個人差があるので、期日を区切りつつ無理に急がないことも大切です。
仏壇・お墓は「祭祀の承継者」が引き継ぐ
仏壇やお墓は、ほかの家財と扱いが違います。民法897条は、系譜・祭具・墳墓の所有権は、慣習に従って祖先の祭祀を主宰する人が引き継ぐと定めています。親の指定があれば、指定された人が引き継ぎます。
そのため、仏壇やお墓は遺産分割で分ける財産とは別に考えます。まず誰が引き継ぐかを決め、そのうえで仏壇を引き取るか、供養して処分するかを話し合います。
お墓を閉じて遺骨を移すときは、遺骨がある場所の市区町村で改葬許可を受けます。流れと必要書類は墓じまいの流れにまとめています。
6. 片付けを業者に頼むとき|費用の内訳と許可の確かめ方

家財が多い、遠方で通えない場合は、業者に頼む方法があります。
家庭のごみの回収には、市区町村の許可が要る
環境省は、家庭の廃棄物を回収するには、市区町村の「一般廃棄物処理業許可」か委託が必要だと案内しています。「産業廃棄物処理業の許可」や「古物商の許可」では回収できません。
無料回収をうたうちらしやトラックでも、許可のない業者に渡すと不法投棄などに巻き込まれるおそれがあります。片付け業者に頼むときは、処分を誰が担うのか、許可を持つ業者に引き渡すのかを聞いておきます。
分からないときは、実家のある市区町村の清掃担当に問い合わせると、許可業者を教えてもらえる場合があります。遺品整理の頼み方は遺品整理と家財処分で詳しく扱っています。
実家じまいの費用は、項目ごとに分けて考える
実家じまいの費用について、国や自治体がまとめた全国的な相場は、当サイトでは見つけられていません。家財の量、建物の構造、道路の広さで金額は大きく変わります。総額より、項目ごとに見積りを取るほうが比べやすくなります。
| 費用の項目 | 主な依頼先 | 公的に確かめられること |
|---|---|---|
| 家財の片付け・処分 | 片付け業者、市区町村の許可業者 | 家庭の廃棄物の回収には一般廃棄物処理業許可か委託が必要(環境省) |
| 家電4品目 | 家電小売店など | リサイクル料金と収集運搬料金がかかる(環境省) |
| 建物の解体 | 解体業者 | 市区によっては補助金がある(契約前の申請が条件のことが多い) |
| 相続登記 | 司法書士 | 登録免許税は価額の0.4%(国税庁) |
| 売却 | 不動産会社 | 仲介なら仲介手数料、利益が出れば譲渡所得の税金 |
| 相続土地国庫帰属 | 法務局 | 審査手数料は土地1筆14,000円、別に負担金(法務省) |
見積りを取るときのコツ
- 2社以上に、同じ範囲(家財のみ/解体込み)で見積りを頼む
- 「一式」ではなく、家財処分・建物本体・塀や庭木を分けて書いてもらう
- 追加料金が出る条件(量が増えた、階段作業など)を書面で確かめる
内訳を分けるのは、補助金の計算にも関わるからです。たとえば横須賀市の空き家解体費用助成事業では、家具家財・残置物の処分や、塀・植栽の撤去は補助の対象外とされています(当サイトの横須賀市の空き家ページ、2026年9月11日確認)。
手元のお金が足りないとき
片付けや解体の費用を先に払えない場合は、順番を見直します。家財や建物を残したまま売却・買取の相談ができるか、片付け費用を売却代金から精算できるかを聞く方法があります。
7. 家をどうするか決める|売る・貸す・解体・国庫帰属(ステップ6)
家の処分には、主に5つの選択肢があります。建物の状態や立地、管理できる距離で向き不向きが変わります。
| 選択肢 | 向いている場面 | 先に確かめること |
|---|---|---|
| 住む | 相続人の誰かが住む予定がある | 修繕費、耐震性、他の相続人への代償金 |
| 貸す | 賃貸の需要がある地域 | 修繕・管理の担い手。貸すと3,000万円控除が使えなくなる |
| そのまま売る | 建物が使える、早く手放したい | 相続登記、境界、残置物の扱い |
| 解体して土地を売る | 建物が古く傷んでいる | 補助金の申請時期、解体後の固定資産税 |
| 国庫に帰属させる | 売れない、引き取り手がない土地 | 建物がある土地は申請できない、負担金がかかる |
売却の進め方は相続した実家を売る前のチェックリストで詳しく扱っています。
3,000万円控除の期限から「売る時期」を逆算する
親が一人で住んでいた家を売るなら、空き家の3,000万円特別控除を使えるかを先に確かめます。譲渡所得から最高3,000万円を控除できる特例です。
主な要件は、昭和56年5月31日以前に建てられた家であること、売却代金が1億円以下であることなどです。相続の時から売るまでに、貸したり住んだりしていないことも要件です。耐震リフォームをするか、建物を取り壊してから売ります(売った年の翌年2月15日までの工事も可)。
相続人が3人以上の場合は、令和6年1月1日以後の譲渡から控除額が2,000万円までになります。
売る期限は2つあり、両方を満たす必要があります。
| 前提:親が令和7年(2025年)6月に死亡 | 期限 |
|---|---|
| ①相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日 | 令和10年(2028年)12月31日 |
| ②特例の対象になる売却の期間 | 令和9年(2027年)12月31日まで |
| 実際の売却期限(早いほう) | 令和9年(2027年)12月31日 |
この例では、相続から約2年半で売却を終える必要があります。片付けや解体の段取りに時間がかかるほど、余裕はなくなります。特例を使うには、市区町村が出す「被相続人居住用家屋等確認書」も要ります。要件の詳細は空き家の3,000万円控除をご覧ください。
解体補助金は「契約前の申請」が条件になりやすい
市区によっては、古い空き家の解体に補助金があります。当サイトの市区ページで確かめた例を3つ挙げます。
| 市 | 制度名と上限額 | 主な注意点 |
|---|---|---|
| 八王子市 | 未耐震空き家除却支援補助金。除却工事費の3分の2以内、上限100万円・50万円・25万円 | 上限は相続からの期間で下がる。交付決定前の契約・着工は対象外。令和8年度の受付は終了 |
| 熊谷市 | 空き家等除却補助金。上限30万円 | 市の判定が必要。交付決定の通知後に着手。借地なら土地所有者の同意が必要 |
| 横須賀市 | 空き家解体費用助成事業。税抜き対象工事費の2分の1、上限35万円 | 市職員の老朽度判定が必要。家財の処分費は対象外 |
出典:当サイトの各市ページ(八王子市・熊谷市は2026年9月9日、横須賀市は2026年9月11日に各市の公式案内で確認した内容)。予算や受付状況は年度で変わります。
八王子市の上限は、除却完了日が相続発生日から3年を経過する日の属する年度までなら100万円です。5年までなら50万円、10年までなら25万円に下がります。熊谷市は、税抜きの除却費の5分の4と、床面積×1㎡あたり2万円のうち低いほうで計算し、上限30万円です。
3市に共通するのは、工事の契約や着工を先にすると補助の対象から外れる点です。見積りを取ったら、契約の前に市の窓口へ相談します。解体の注意点は相続した実家を解体する前に確認することにまとめています。
解体すると、土地の固定資産税が上がることがある
住宅が建つ土地(住宅用地)には、固定資産税の特例があります。総務省によると、200㎡以下の部分は評価額の6分の1、それを超える部分は3分の1が課税標準の上限です。
固定資産税は、毎年1月1日の状況で課税されます。年内に建物を取り壊して更地になると、翌年度からこの特例が外れる可能性があります。売却の時期が見えないうちに解体だけ先に進めると、税負担が増えることがあります。解体の時期は、売る時期と合わせて決めます。
売れない土地は「相続土地国庫帰属制度」も選択肢
相続した土地を国に引き渡す制度もあります。法務省によると、建物がある土地は申請できません。担保権が付いた土地や、境界がはっきりしない土地も対象外です。
審査手数料は土地1筆あたり14,000円です。承認されると、10年分の標準的な管理費用を考慮して算定した負担金を納めます。解体と測量の費用もかかるため、売却や買取を試してから比べる方法が現実的です。詳しくは相続土地国庫帰属制度をご覧ください。
売るか解体するかで迷う段階なら、建物を残した状態でいくらになるかを先に聞くと、比べる基準ができます。
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8. 解約・届出と、空き家として管理する間の注意(ステップ7)
家の行き先が決まったら、契約の解約と届出に進みます。
解約は「使い終わる日」から逆算する
| 契約・届出 | 止める時期の目安 | 確かめること |
|---|---|---|
| 電気・水道・ガス | 片付けと内覧が終わってから | 解体業者が水道を使うか |
| 固定電話・ネット・新聞 | 書類の確保が済んでから | 引落とし口座と契約者名 |
| 火災保険 | 建物を手放すまで続ける | 空き家になったことを保険会社へ伝える |
| 郵便物 | 早めに手配 | 相続人の住所に届くようにする |
電気や水道を止めると、管理の作業がしにくくなります。止める時期は実家の電気・水道を止めるか残すかで整理しています。
管理不全空家として勧告されると、税の特例が外れる
令和5年12月13日に改正空家法が施行されました。放置すれば危険な状態になるおそれのある家は「管理不全空家」として、市区町村から指導・勧告を受けることがあります。勧告を受けると、固定資産税の住宅用地特例が解除されます。
見回りの担当と頻度を家族で決め、窓・雨どい・庭木を写真で残しておきます。
9. 実家じまいでやってはいけないこと|親族トラブルを防ぐ
実家じまいの失敗は、順番の取り違えから起きがちです。
| やってはいけないこと | 起きうること | 防ぎ方 |
|---|---|---|
| 相続放棄を考えているのに家財を売る・捨てる | 単純承認とみなされるおそれ(民法921条) | 3か月の期限内に方針を決め、それまで処分しない |
| 兄弟に断らず形見を持ち帰る・処分する | 遺産分割で不信が生まれる | 仕分けの日を決め、記録を残す |
| 補助金を調べる前に解体を契約する | 補助の対象外になる | 見積り後、契約前に市区へ相談する |
| 売る前に家を貸す | 空き家の3,000万円控除が使えなくなる | 貸す・売るの方針を先に決める |
| 許可のない回収業者に頼む | 不法投棄などに巻き込まれる | 一般廃棄物処理業の許可を確かめる |
共有名義のまま先送りしない
話し合いがまとまらないからと、とりあえず兄弟の共有で登記することがあります。ただ、共有の家は売るにも解体するにも、共有者の足並みがそろわないと進みません。
次の相続が起きると共有者が増え、連絡だけで時間がかかります。誰が引き継ぐか、売って代金を分けるかは、遺産分割の段階で決めておきます。
10. 遠方から実家じまいを進めるコツと相談先

実家が遠いと、帰省の回数が大きな負担になります。現地でしかできない作業と、自宅でできる作業を分けます。
帰省の回数を減らす段取り
- 1回目:書類と貴重品の確保、家全体の写真撮影、鍵の管理者を決める
- 自宅で:戸籍や登記事項証明書の請求、業者や市区への問い合わせ、見積りの比較
- 2回目:家財の仕分け、業者の下見と見積りの立会いをまとめて入れる
- 3回目:搬出の立会い、残す物の発送
市区によっては、3,000万円控除の確認書を郵送で申請できるところもあります(熊谷市・横須賀市など)。業者の下見は同じ日に複数入れると、1回の帰省で比べられます。
相談先の使い分け
| 相談したいこと | 相談先 |
|---|---|
| 相続登記、名義が祖父母のまま | 法務局の手続案内、司法書士 |
| 相続放棄、相続人どうしの争い | 家庭裁判所、弁護士、司法書士 |
| 相続税、3,000万円控除、売却時の税金 | 税務署、税理士 |
| 解体補助金、空き家バンク、管理の相談 | 実家のある市区町村の空き家担当 |
| 家財の処分、許可業者 | 市区町村の清掃担当、許可を持つ業者 |
| 売却・買取の査定 | 不動産会社(複数社で比べる) |
相談の前に、登記事項証明書、固定資産税の納税通知書、家の写真、相続人の一覧をそろえておくと話が早く進みます。家の処分を迷っている段階でも、査定を取れば「売ったらいくらか」という判断の材料が手に入ります。
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【関連】地域ごとの制度と相談先を調べる
解体補助金の有無や、管轄の法務局・家庭裁判所は、実家のある市区町村で違います。1都3県の制度は、都県別のガイドから確かめられます。
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- 横須賀市の空き家|解体補助金と相続後の売却手順
- 相続した空き家の管理チェックリスト
よくある質問
実家じまいは何から始めればいいですか?
家族で窓口役と費用の精算方法を決め、次に相続人と家の名義を確かめます。そのうえで、片付けより先に通帳・権利証・借入れの書類などを確保します。家財の処分や家の売却は、その後に進めます。
実家じまいの費用はどのくらいかかりますか?
家財の量や建物の構造で大きく変わり、公的な全国相場は見当たりません。家財処分、解体、相続登記、売却の項目ごとに見積りを取って比べます。
相続放棄を考えている場合、実家の片付けをしてもいいですか?
家財を売ったり捨てたりすると、民法921条により単純承認とみなされるおそれがあります。雨漏りの応急処置のような保存行為は除かれますが、判断に迷う作業は手を付ける前に弁護士か司法書士に相談してください。
実家は解体してから売るのと、そのまま売るのとどちらがいいですか?
建物の状態や立地で変わります。解体すると土地の固定資産税の特例が外れる可能性があり、解体補助金は契約前の申請が条件のことが多いです。まず建物を残した状態で査定を取り、解体した場合と比べてから決めます。
実家じまいに使える補助金はありますか?
市区によっては空き家の解体補助金があります。たとえば熊谷市は上限30万円、横須賀市は上限35万円です。条件や受付期間は市区と年度で違うため、工事の契約前に市区町村の窓口で確かめてください。
まとめ
実家じまいは、家族の方針、相続人と名義の確認、貴重品と書類の確保、家財の仕分け、仏壇・お墓、家の処分、解約・届出の順で進めます。
注意したいのは、取り返しのつかない作業の順番です。相続放棄を考えている間は家財を処分しない。解体は補助金の申請と固定資産税の時期を確かめてから契約する。売る前に貸さない。この3つを押さえるだけでも、失敗の多くは防げます。
空き家の3,000万円控除は、令和9年12月31日までの売却が対象です。登記は司法書士、税金は税理士、補助金は市区町村、売却は不動産会社と、論点ごとに相談しながら進めましょう。
一次情報・参考資料
- 日本法令外国語訳データベース(法務省)「民法」第897条・第898条・第915条・第921条(平成25年法律第94号までの改正を反映した版、確認日:2026-10-01)
- 裁判所「相続の放棄の申述」(確認日:2026-10-01)
- 法務省「相続登記の申請義務化について」(令和8年4月1日更新、確認日:2026-10-01)
- 法務省「相続土地国庫帰属制度について」(確認日:2026-10-01)
- 国税庁「No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」(令和8年4月1日現在法令等、確認日:2026-10-01)
- 国税庁「No.7191 登録免許税の税額表」(令和8年4月1日現在法令等、確認日:2026-10-01)
- 国税庁「No.4152 相続税の計算」、「No.4205 相続税の申告と納税」、「No.2022 納税者が死亡したときの確定申告(準確定申告)」(令和8年4月1日現在法令等、確認日:2026-10-01)
- 総務省統計局「令和5年住宅・土地統計調査 住宅及び世帯に関する基本集計(確報集計)結果の概要」(PDF)(令和6年9月25日公表、確認日:2026-10-01)
- 総務省「固定資産税の概要」(確認日:2026-10-01)
- 国土交通省「空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律(令和5年法律第50号)について」(確認日:2026-10-01)
- 環境省「廃棄物の処分に『無許可』の回収業者を利用しないでください!」(確認日:2026-10-01)
