相続土地国庫帰属制度とは|費用・要件と実家の土地で使う前の確認点

相続した使わない土地を見に来た夫婦

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結論から言うと、相続した使わない土地は、要件を満たせば国に引き渡せます。費用は審査手数料が1筆14,000円、承認後の負担金が原則20万円です。ただし建物がある土地は申請できないため、実家なら解体が前提になります。売却や相続放棄と比べてから決めましょう。

この記事では、法務省の案内・Q&A・統計と法律の条文をもとに、次のことを整理します。

  • 申請できる人と、国が引き取れない土地の要件
  • 審査手数料と負担金の計算方法(宅地の面積別の式)
  • 実家の敷地を例にした、前提つきの費用の試算
  • 1都3県の申請先(法務局本局)と、審査の流れ・期間
  • 法務省の最新統計を当サイトで集計した運用実績
  • 売却・寄附・相続放棄との比べ方と相談先
目次

1. 相続土地国庫帰属制度とは|相続した土地を国に引き渡す仕組み

相続土地国庫帰属制度は、相続などで取得した土地を、一定の要件のもとで国に引き渡す制度です。「国庫に帰属させる」とは、土地の持ち主を国にすることを指します。

目的は、管理されずに放置され、所有者不明になる土地を防ぐことです。どんな土地でも引き取るわけではなく、管理に過分な費用がかからない土地に限られます。

いつから、どんな土地が対象か

制度は令和5年(2023年)4月27日に始まりました。根拠は「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」(令和3年法律第25号)です。この記事では「国庫帰属法」と呼びます。

制度開始前に相続した土地も対象です。宅地のほか、田畑や森林も申請できます。

土地が国のものになるタイミング

手続きは「申請→法務局の審査→承認→負担金の納付」の順に進みます。国庫帰属法11条により、負担金を納めた時点で、土地の所有権が国に移ります。

承認されただけでは、まだ自分の土地のままです。国への所有権移転の登記は国の機関が行うため、申請者が登記を申請する必要はありません。

国に移った後、農地と森林は農林水産大臣が、それ以外は財務大臣が管理します。

2. 申請できる人|相続・遺贈で取得した人、共有なら全員で

国庫帰属法2条1項は、申請できる人を「相続等によりその土地の所有権の全部又は一部を取得した者」に限っています。具体的には次のとおりです。

取得のしかた申請できるか補足
相続で取得したできる遺産分割で取得した場合を含む
相続人が遺贈で取得したできる遺贈は相続人に対するものに限る
相続人以外の人が遺贈で取得したできない法務省Q&Aで対象外と明記
自分で売買して取得した原則できない相続で取得した共有者と共同なら可

共有の土地は共有者全員で申請する

兄弟で相続して共有になった土地は、共有者全員がそろって申請します(国庫帰属法2条2項)。一人でも反対すれば、その土地は申請できません。

連絡が取れない共有者がいる場合は、所有者不明土地管理人の選任など裁判所の制度を使います。弁護士への相談が前提です。

費用の分担も含めて、申請前に共有者で話し合っておきましょう。

相続登記がまだでも申請はできる

相続登記が済んでいなくても、相続で取得した土地なら申請できます。その場合は、戸籍の証明書など所有者であることを示す書類を付けます。

ただし、却下・不承認・取下げになると、土地は自分のものとして残ります。そのときは相続登記の義務が残る点に注意してください。

申請は本人が行い、書類作成は3士業に頼める

申請手続そのものは、本人か法定代理人(成年後見人など)しかできません。家族が任意の代理人として申請することは認められていません。

書類の作成は、弁護士・司法書士・行政書士の3士業に代行を頼めます。家族が手伝うことも可能です。

3. 引き渡せない土地|却下要件5つと不承認要件5つ

建物や樹木がある土地と更地の違い

国が引き取れない土地は、法律で2段階に分かれています。申請自体ができない「却下要件」と、審査の結果で判断される「不承認要件」です。

却下要件|当てはまると申請できない(国庫帰属法2条3項)

却下要件実家の土地で起きやすい例
① 建物がある土地空き家が残っている。未登記の建物も含む
② 担保権や使用収益権が設定されている土地完済済みでも抵当権の登記が残っている
③ 他人の利用が予定される土地現に通路になっている部分、墓地を含む
④ 土壌汚染されている土地特定有害物質が基準を超える
⑤ 境界が明らかでない、争いがある土地隣家と境界の認識が食い違っている

法務省Q&Aによると、建物があれば例外なく却下です。登記されていない建物でも、現に建っていれば申請できません。原則は解体してから申請します。

抵当権は、ローンを完済していても登記が残っていれば申請できません。先に抵当権の抹消登記を済ませます。親の代の古い抵当権が残っていないか、登記事項証明書で確かめましょう。

境界は、申請者が認識する境界を現地で示せることが前提です。法務局は隣地の所有者にも認識を照会します。目印がなければ紅白ポールやプレートを設置し、審査中も残しておく必要があります。

不承認要件|審査で個別に判断される(国庫帰属法5条1項)

不承認要件法務省Q&Aが挙げる例
① 管理に過分な費用がかかる崖がある勾配30度以上かつ高さ5メートル以上で、崩落の危険がある
② 管理を妨げる有体物が地上にある果樹園の樹木、倒木のおそれがある枯れ木、廃屋、放置車両
③ 除去が必要な有体物が地下にある建物の基礎、コンクリート片、古い水道管、浄化槽、井戸
④ 隣地とのトラブルがないと管理できない通行を妨げられている、不法に占有されている
⑤ その他、管理に過分な費用・労力がかかる崩落防止工事が要る、土地改良区の賦課金がかかる

実家を解体した後の土地で気をつけたいこと

実家の敷地は、建物を壊せば終わりではありません。表の②と③が問題になりやすいからです。

庭の大きな木、ブロック塀、物置は、地上の有体物として判断されます。法務省Q&Aは、小さな物置小屋は建物に当たらない場合があるとしています。その場合も、管理に過分な費用がかかるかで審査されます。

解体工事で基礎や浄化槽、井戸を地中に残すと、③に当たるおそれがあります。解体の見積もりでは、地中の撤去範囲を書面で確認しておきましょう。解体の注意点は相続した実家を解体する前に確認することにまとめています。

4. 費用|審査手数料1筆14,000円と、10年分の負担金

国に支払うお金は、申請時の審査手数料と、承認後の負担金の2つです。このほか、解体費や測量費、書類作成を頼む場合の報酬が別にかかります。

審査手数料|1筆14,000円、返還なし

審査手数料は、土地1筆あたり14,000円です。「筆(ひつ)」は登記簿上の土地の単位を指します。申請書に収入印紙を貼って納めます。

まとめて申請しても軽減はありません。10筆なら14万円です。取下げ、却下、不承認のいずれでも返還されません。印紙に割印をすると使えなくなる点にも注意してください。

負担金|原則20万円、市街地の宅地などは面積で計算

負担金は、国が管理する10年分の標準的な費用をもとに決まります(国庫帰属法10条1項)。法務省Q&Aでは「20万円が基本」です。納めるのは承認時の1回だけで、10年後に追加で払うことはありません。

ただし、次の土地は面積に応じて20万円を超えます。

  • 市街化区域または用途地域が指定された地域の宅地
  • 市街化区域・用途地域内、農用地区域内などの田・畑
  • 森林

用途地域は、住居・商業など土地の使い方の大枠を決めた地域です。住宅街の実家は、どちらかに当たることが多いと考えられます。該当するかは市区町村で確認できます。

宅地の負担金の計算式(市街化区域・用途地域内)

登記上の面積計算式法務省の例
50㎡以下面積×4,070円+208,000円50㎡→411,000円
50㎡超100㎡以下面積×2,720円+276,000円100㎡→548,000円
100㎡超200㎡以下面積×2,450円+303,000円200㎡→793,000円
200㎡超400㎡以下面積×2,250円+343,000円400㎡→1,243,000円
400㎡超800㎡以下面積×2,110円+399,000円800㎡→2,087,000円
800㎡超面積×2,010円+479,000円1,000㎡→2,489,000円

出典:法務省「相続土地国庫帰属制度のご案内(第2版)」。1,000円未満は切り捨てです。

面積は、現況ではなく登記記録の地積で計算します。現況と違う場合は、承認前に地積更正の登記をするのが原則です。

田畑と森林の例も法務省が示しています。市街地などの田畑は500㎡で約72万円です。森林は1,500㎡で約27万円、3,000㎡で約30万円です。

隣り合う2筆以上はまとめて計算できる

隣り合う2筆以上の土地は、申し出れば1つの土地とみなして負担金を計算できます。同じ種目(宅地同士など)であることが条件です。申出は、申請書の提出から承認までの間に行います。

実家の敷地が2筆に分かれていることは珍しくありません。登記事項証明書や公図で、筆の数と並びを確かめておきましょう。

5. 実家の敷地で試算|手数料・負担金・解体・固定資産税

ここでは、実家の敷地を国庫帰属させる場合の費用を、前提を置いて試算します。数字は法務省の計算式に当てはめたもので、実際の負担金は承認時の通知で決まります。

前提つきの計算例

ケース前提手数料負担金国への支払い計
A用途地域内の宅地1筆・165㎡14,000円707,000円721,000円
B用途地域外の宅地1筆・165㎡14,000円200,000円214,000円
C-1用途地域内の宅地2筆・各100㎡を別々に計算28,000円1,096,000円1,124,000円
C-2Cと同じ2筆を合算の申出で計算28,000円793,000円821,000円

ケースAの負担金は、165㎡×2,450円+303,000円=707,250円です。1,000円未満を切り捨てて707,000円になります。165㎡は約50坪です。

ケースCは、合算の申出をするだけで負担金が303,000円下がります。手数料は筆ごとにかかるので、2筆分の28,000円は変わりません。

同じ広さでも、用途地域の内か外かで負担金が3倍以上違います。まず、実家の土地がどの区域にあるかを確かめることが出発点です。

国への支払い以外にかかる費用

実家では解体費が大きくなりがちです。構造や立地で大きく変わるため、ここでは金額を示しません。自治体の解体補助の例を、当サイトの市区ページから申請先と合わせてまとめます。

市区解体の補助(市区ページの記載)空き家バンク国庫帰属の申請先
埼玉県熊谷市空き家等除却補助金。上限30万円。市の不良度判定などが条件埼玉県北部地域空き家バンクに参加さいたま地方法務局(本局)
千葉県香取市危険空家除却工事補助金。最大50万円。特定空家等の認定が条件2026年9月11日時点で募集中の物件なし千葉地方法務局(本局)
神奈川県横須賀市空き家解体費用助成事業。費用の2分の1、上限35万円性質の違う3つのバンクがある横浜地方法務局(本局)

出典:当サイト熊谷市の空き家ページ(2026年9月9日確認)、香取市の空き家ページ(2026年9月11日確認)、横須賀市の空き家ページ(2026年9月11日確認)。

どの補助も、交付決定前に着工すると対象外です。補助は年度と予算で変わるため、解体の契約前に各市へ確認しましょう。

解体後は土地の固定資産税が上がりやすい

見落としやすいのが固定資産税です。住宅が建つ土地には「住宅用地特例」があります。200㎡以下の部分は、税額の基になる課税標準額が価格の6分の1に下がります(総務省)。

建物を壊して更地にすると、この特例が外れます。負担調整の仕組みもあるため倍率は一律ではありませんが、土地の税額は上がるのが一般的です。

固定資産税は、毎年1月1日時点の所有者にかかります。解体してから申請し、審査に約8か月かかると、その間に1月1日をまたぐことがあります。法務省Q&Aは、12月に承認されても国への登記が1月になれば、翌年分は申請者の負担になると案内しています。

試算して高いと感じたら、先に売却の可能性を確かめる

ケースAなら、国への支払いだけで70万円を超え、解体費と固定資産税も加わります。住宅街の宅地なら、費用を払って手放す前に、売れる可能性を確かめる価値があります。

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6. 申請先と手続きの流れ|土地のある都道府県の法務局本局へ

法務局の窓口で承認申請書を出す男性

申請先は、土地がある都道府県の法務局・地方法務局の「本局」です。担当は不動産登記部門です。支局や出張所では申請も相談も受け付けていません。

たとえば熊谷市の不動産登記は、さいたま地方法務局熊谷支局の管轄です。それでも国庫帰属の申請先は、さいたま市にある本局になります。登記の窓口と混同しないようにしましょう。

1都3県の申請先(本局)

土地の所在申請先所在地
東京都東京法務局〒102-8225 東京都千代田区九段南1丁目1番15号
神奈川県横浜地方法務局〒231-8411 横浜市中区北仲通5丁目57番地 横浜第2合同庁舎
埼玉県さいたま地方法務局〒338-8513 さいたま市中央区下落合5丁目12番1号 さいたま第2法務総合庁舎
千葉県千葉地方法務局〒260-8518 千葉市中央区中央港1丁目11番3号

出典:各法務局の公式サイト(確認日:2026-10-01)。窓口の場所や受付時間は来庁前に各局で確認してください。

手続きの流れ

順番やることポイント
① 事前相談本局に予約して相談する対面・電話・ウェブ。1回30分
② 書類の準備申請書と添付書類をそろえる境界の目印と写真が要る
③ 申請本局の窓口か郵送で提出する手数料は収入印紙。オンライン不可
④ 審査書面審査と実地調査標準処理期間は8か月
⑤ 承認の通知承認通知と納入告知書が届く負担金の額が書かれている
⑥ 負担金の納付金融機関などで納める通知が届いた翌日から30日以内
⑦ 国庫帰属納付した時点で国の土地になる登記は国が行う

事前相談は遠方からでも使える

相談は予約制で、法務局手続案内予約サービスから申し込みます。土地が遠方なら、住まいの近くの本局でも相談できます。所有者本人でなく、家族が相談することも可能です。

相談には、法務省のサイトにある「相談票」と「チェックシート」を記入して持参します。

ただし、相談での見解は承認を約束するものではありません。

全員が用意する添付書類

  • 土地の位置と範囲を示す図面(国土地理院の地図や登記所の地図の写しで作成できる)
  • 隣の土地との境界点を示す写真
  • 土地の形状がわかる写真(遠景と近景)
  • 申請者の印鑑証明書

登記名義が亡くなった親のままなら、戸籍の証明書や遺産分割協議書なども付けます。

7. 審査と実地調査|標準処理期間は8か月

担当者が土地の境界と状態を実地で調べる様子

申請後は、法務局が書面と現地の両方で土地を調べます。東京法務局と千葉地方法務局は、標準処理期間を8か月と案内しています。事案や天候によっては超える場合があります。

実地調査では同行を頼まれることがある

法務局の職員は、申請された土地に出向いて調べます。案内がないとたどり着けない土地などでは、申請者に同行を求めることがあります。交通費などは自己負担です。

正当な理由なく調査に応じないと、申請は却下されます(国庫帰属法4条1項3号)。遠方なら、土地に詳しい親族などを代わりに指定できます。

隣地の所有者や自治体にも連絡がいく

境界については、法務局が隣の土地の所有者に認識を照会します。異議が出ると却下の対象になります。

申請書には、国や自治体への情報提供に同意するかのチェック欄があります。同意すると、自治体などが土地の寄附を受けたいかを法務局が確認します。後で見る統計では、これをきっかけに取り下げた例もあります。

審査中の管理と、売却が決まったとき

負担金を納めるまで、土地は申請者のものです。審査中の草刈りなどの管理も、申請者の責任です。

審査中に買い手が見つかった場合は、売る前に申請を取り下げます。取り下げずに売ると、申請は却下されます。

承認後に負担金を納めないとどうなるか

負担金は、通知が届いた翌日から30日以内に一括で納めます。期限を過ぎると承認は効力を失います(国庫帰属法10条3項)。もう一度申請するときは、最初からやり直しです。

法務省Q&Aは、負担金が想定より高い場合に、納めない選択もできるとしています。分割払いはできません。

却下や不承認、負担金の額に不服があれば、法務省民事局に審査請求ができます。期限は処分を知った日の翌日から3か月以内です。

8. 運用実績|法務省の統計を当サイトで集計

法務省は制度の運用状況を統計で公開しています。令和8年(2026年)8月31日現在の速報値を、当サイトで集計し直しました。

申請と帰属の件数(地目・種目別)

区分申請件数申請に占める割合帰属件数帰属に占める割合
宅地2,091件34.9%1,164件37.3%
田・畑(帰属は農用地)2,335件38.9%989件31.7%
山林(帰属は森林)902件15.0%203件6.5%
その他669件11.2%763件24.5%
合計5,997件100%3,119件100%

出典:法務省「相続土地国庫帰属制度の統計」(令和8年8月31日現在、速報値)。割合は当サイトが計算しました。申請は地目別、帰属は種目別で、区分の基準が違います。

帰属した土地では宅地が最多です。実家の跡地のような宅地も、要件を満たせば引き取られています。

結論が出た件数の内訳

結果件数結論が出た4,443件に占める割合
帰属3,119件70.2%
取下げ1,139件25.6%
不承認100件2.3%
却下85件1.9%

帰属・却下・不承認・取下げを合わせると4,443件です。申請5,997件との差の1,554件は、審査中などと考えられます(当サイトの推計で、内訳は公表されていません)。

却下と不承認だけで比べると、帰属は94.4%を占めます。ただし、この数字だけで「ほとんど通る」と読むのは早計です。

取下げの中身を見ると実態が分かる

取下げ1,139件のうち、405件は「却下・不承認であることが判明した」ものです。却下・不承認の185件と合わせると590件です。結論が出た件数の約13%が、要件を満たせなかったことになります。

一方、取下げのうち586件は「有効活用の見込みが生じた」ものです。法務省は、自治体による活用の決定や、隣の土地の所有者からの引受けの申出を例に挙げています。申請をきっかけに、別の引き取り手が見つかることもあるわけです。

却下・不承認の理由で多いもの

不承認100件の理由で最も多いのは、地上の工作物・車両・樹木など(46件)でした。次いで、国による追加の整備が必要な森林(37件)です。

却下85件の理由では、添付書類の不提出(37件)が最多です。境界が明らかでない(23件)、現に通路として使われている(22件)が続きます。建物がある土地は4件でした。1件に複数の理由がある場合があります。

実家の跡地に当てはめると、庭木や塀などの残し方と、境界の示し方が要所になると考えられます。

件数が筆単位か申請単位かは、統計ページに記載がなく不明です。

9. 国庫帰属か売却か|空き家バンク・寄附・相続放棄と比べる

国庫帰属と売却などの選択肢を家族で比べる様子

法務省Q&Aは、国庫帰属以外の方法として、相続放棄、自治体などへの寄附、民間での売買・贈与を挙げています。農地なら農地中間管理機構、森林なら森林経営管理制度もあります。

選択肢ごとの違い

方法建物お金の流れ主な注意点
売却(仲介・買取)残したままでも可代金を受け取る譲渡所得の税金。売れるまでの期間
空き家バンク残したままでも可成約すれば代金・賃料登録しても成約するとは限らない
自治体などへの寄附相手次第原則なし受け入れる自治体は限られる
相続放棄関係なしなし原則3か月以内。全財産を手放す
相続土地国庫帰属制度解体が前提手数料と負担金を払う審査約8か月。手数料は返らない

売却・空き家バンクを先に検討する理由

国庫帰属は、お金を払って手放す方法です。売却できれば、逆に代金を受け取れます。建物を残したまま売れる可能性もあり、解体費や更地の固定資産税を避けられる場合があります。

空き家バンクは、自治体が空き家の情報を紹介する仕組みです。熊谷市が参加する埼玉県北部地域空き家バンクでは、契約は宅建業者の仲介で行い、仲介手数料がかかります(当サイト熊谷市ページの記載)。使い方は空き家バンクの使い方で解説しています。

売却の進め方は相続した実家を売る前のチェックリストにまとめました。

相続放棄との違い

相続放棄は、相続の開始を知った時から3か月以内に家庭裁判所へ申し立てます。収入印紙は申述人1人につき800円分です。放棄すると、預貯金を含めたすべての財産を引き継げません。

国庫帰属は、相続したうえで特定の土地だけを手放す方法です。詳しくは相続放棄と実家の扱いをご覧ください。

民間の「引き取りサービス」は慎重に

費用を受け取って土地を引き取るとうたう民間サービスもあります。当サイトは特定の業者を勧めません。検討するなら、引取り後の名義と責任を書面で確かめ、弁護士に相談しましょう。

国庫帰属に費用をかける前に、まずは売却の可能性を確かめておくと比較がしやすくなります。

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10. 相続登記との関係と、相談先の使い分け

国庫帰属の申請に相続登記は必須ではありません。ただし、相続登記の義務は別に残ります。

相続登記の義務化との関係

令和6年4月1日から、相続登記が義務になりました。不動産を相続で取得したと知った日から3年以内に申請します。正当な理由なく怠ると、10万円以下の過料の対象です。

令和6年4月1日より前に相続した不動産は、令和9年3月31日が期限です。国庫帰属の審査には約8か月かかり、却下や不承認になれば土地は手元に残ります。期限が近い場合は、登記を先に済ませておくと安心です。詳しくは相続登記の義務化と期限をご覧ください。

相談先の使い分け

相談したいこと相談先
制度を使えそうか、書類に漏れがないか土地のある都道府県の法務局本局(予約制)
申請書・添付書類の作成代行弁護士、司法書士、行政書士
境界がわからない、目印を設置したい土地家屋調査士
相続登記、抵当権の抹消司法書士、法務局の手続案内
共有者と連絡が取れない、隣地と争いがある弁護士
解体補助、空き家バンク、寄附の相談土地のある市区町村の空き家担当
売れるかどうか、いくらになるか不動産会社(複数社の査定)

相談の前に、登記事項証明書、公図、固定資産税の納税通知書、土地の写真をそろえると、判断が早くなります。

【関連】地域ごとの制度と相談先を調べる

解体補助や空き家バンクの有無は、実家のある市区町村で違います。1都3県の制度は、都県別のガイドから確認できます。

よくある質問

実家の建物が残ったままでも申請できますか?

できません。建物がある土地は却下要件に当たり、登記されていない建物でも同じです。原則として解体してから申請します。申請後すぐに取り壊す予定がある場合は、申請先の法務局本局に問い合わせてください。

国に払う費用は合計いくらですか?

審査手数料が1筆14,000円、承認後の負担金が原則20万円です。市街化区域や用途地域内の宅地は面積で計算し、100㎡なら548,000円です。解体費や測量費、書類作成の報酬は別にかかります。

申請から結果が出るまでどのくらいかかりますか?

東京法務局と千葉地方法務局は、標準処理期間を8か月と案内しています。実地調査などの状況によっては、さらに長くなる場合があります。審査中の土地の管理は申請者が行います。

兄弟で共有している土地でも使えますか?

使えます。ただし共有者全員で共同して申請する必要があります。一人でも同意しない人がいれば、その土地は申請できません。連絡が取れない共有者がいる場合は、弁護士に相談してください。

却下や不承認になったら手数料は戻りますか?

戻りません。取り下げた場合も同じです。理由となった事情を解消すれば、もう一度申請できます。判断に不服があるときは、処分を知った日の翌日から3か月以内に審査請求ができます。

まとめ

相続土地国庫帰属制度を使えば、相続した使わない土地を国に引き渡せます。費用は審査手数料1筆14,000円と、原則20万円の負担金です。市街地の宅地は面積で計算され、165㎡なら負担金は約70万円になります。

実家の土地は解体が前提で、庭木や地中の基礎、境界も審査で見られます。審査には約8か月かかります。

法務省の統計では、結論が出た申請の7割が国に帰属しています。まず売却や空き家バンク、寄附の可能性を確かめ、それでも難しい土地で国庫帰属を検討しましょう。

一次情報・参考資料

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この記事を書いた人

株式会社アクセス・リンク代表取締役。相続と実家じまいの情報を専門に扱う「相続と実家じまいガイド」を運営しています。相続登記、空き家の売却・解体、墓じまい・改葬など、親の実家やお墓を引き継ぐ家族が直面する手続きを調べ、記事にまとめています。法務省・国税庁・自治体などの一次情報を原文で確かめ、1都3県を中心に市区町村ごとの補助制度や相談窓口を整理しています。士業ではないため個別の法律・税務相談には応じていませんが、次に何を確認し、誰に相談すればよいかが分かる情報をお届けします。

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