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結論から言うと、空き家の管理は「月1回の通風・通水・外回り点検」を目安に始めると、無理なく続けやすくなります。遠方で通えないなら、管理業者や自治体の相談窓口に頼む方法もあります。
放置して市区町村から「管理不全空家」として勧告を受けると、土地の固定資産税を軽くする住宅用地特例が外れます。
この記事では、国土交通省の管理指針とチェックリスト、令和6年の空き家所有者実態調査をもとに、次の順で整理します。
- 空き家を放置すると何が起きるか(劣化・事故・防犯・税金)
- 改正空家法の「管理不全空家」と固定資産税の関係、税額の計算例
- 管理の頻度の目安と、通う時間で頻度がどう変わるかのデータ
- 庭木・郵便物・室内の点検ポイントと、1回の訪問で使う点検表
- 管理を頼むときの契約の確認点と、自治体の相談窓口の例
1. 空き家の管理とは|所有者に求められていること
実家に誰も住まなくなっても、建物と土地の管理責任は所有者にあり、相続人がその立場を引き継ぎます。
空家法(空家等対策の推進に関する特別措置法)5条は、所有者等に「空家等の適切な管理に努める」ことを求めています。周辺の生活環境に悪影響を及ぼさないための努力義務です。
法律上の「空家等」に当たるのはどんな家か
空家法2条は、居住その他の使用がなされていないことが「常態」である建物と敷地を「空家等」と定めています。敷地には立木なども含まれます。
国の基本指針は、おおむね年間を通して使用実績がないことを、常態かどうかの1つの基準として挙げています。たまに荷物を取りに行くだけの実家は、空家等と判断される可能性があります。
国の管理指針は「所有者が自ら行うのが基本」
国土交通省と総務省は、空家法の基本指針の中で「管理指針」を示しています。所有者が日ごろ行う管理の目安です。
管理指針は、空き家は不具合が見つかりにくく、傷みが早く進む傾向があると説明しています。そのうえで、一定の頻度で点検し、破損があれば修繕することが必要だとしています。
定期的な管理は所有者が自ら行うのが基本です。専門的な補修や、遠方で通えない場合は、業者などへの委託が考えられるとしています。
データで見る|1都3県の「使い道のない空き家」は約66万戸
総務省統計局の令和5年住宅・土地統計調査では、全国の空き家は900万2千戸、空き家率は13.8%で、いずれも過去最高でした。
このうち、賃貸用・売却用・別荘などを除いた空き家は385万6千戸です。相続後に使い道が決まっていない実家は、多くがこの区分に入ると考えられます。
| 地域 | 空き家数 | 空き家率 | 賃貸・売却用等を除く空き家 | 空き家に占める割合 |
|---|---|---|---|---|
| 東京都 | 89万7千戸 | 10.9% | 21万4千戸 | 23.9% |
| 神奈川県 | 46万7千戸 | 9.8% | 15万1千戸 | 32.3% |
| 埼玉県 | 33万戸 | 9.3% | 13万6千戸 | 41.2% |
| 千葉県 | 39万4千戸 | 12.3% | 15万9千戸 | 40.4% |
| 1都3県の合計 | 208万8千戸 | - | 66万戸 | 31.6% |
| 全国 | 900万2千戸 | 13.8% | 385万6千戸 | 42.8% |
使い道のない空き家の割合は、東京都が23.9%、埼玉県と千葉県は約4割で全国平均に近い水準です。
全国では、一戸建の空き家352万3千戸のうち80.9%が、この「賃貸・売却用等を除く空き家」でした。実家のような戸建てほど、使い道が決まらないまま残りやすいことが分かります。
出典:総務省統計局「令和5年住宅・土地統計調査 住宅及び世帯に関する基本集計(確報集計)結果の概要」付表・表2-2。標本調査に基づく推計値です。合計と割合は当サイトが計算しました。
2. 空き家を放置するリスク|劣化・事故・防犯・近隣
国土交通省の空き家対策特設サイトは、放置のリスクとして倒壊、外壁の落下、ねずみや害虫、景観の悪化、悪臭、不法侵入、枝のはみ出しを挙げています。
国の管理指針は、これらを次の4つの観点で整理しています。
| 観点 | 起こりうること | 予防のための管理 |
|---|---|---|
| 保安上の危険 | 建物や塀の倒壊、屋根材・外壁の落下や飛散、擁壁の崩れ | 通気・換気、破損の点検と補修、水抜き穴の清掃 |
| 衛生上の有害 | 汚水の流出、害虫の発生、動物のふん尿、石綿の飛散 | 敷地の清掃、排水設備の点検、駆除 |
| 景観の悪化 | 外壁の破損や汚れ、ごみの散乱 | 定期的な清掃、補修 |
| 生活環境への悪影響 | 悪臭、不法侵入、落雪、枝のはみ出し、動物の騒音 | 封水の補充、戸締まり、剪定、雪下ろし |
管理の頻度が下がると、傷みが進みやすい
国土交通省の「令和6年空き家所有者実態調査」は、管理の頻度と建物の傷み具合の関係を集計しています。年に数回以下になると、構造上の不具合がある割合が大きく増えます。
| 管理の頻度 | 構造上の不具合が生じていた | 不具合や腐朽・破損はなかった |
|---|---|---|
| ほぼ毎日 | 15.3% | 40.5% |
| 週に1〜数回 | 16.3% | 39.2% |
| 月に1〜数回 | 17.5% | 35.2% |
| 年に1〜数回 | 24.3% | 27.4% |
| 数年に1回 | 33.3% | 13.3% |
この表は因果関係を示すものではなく、建物の古さなど別の要因も重なっている可能性があります。
それでも「月1回以上」と「年に数回」の間で差が開く傾向は、頻度の目安を決めるときの参考になります。
倒壊や落下で他人にけがをさせた場合
屋根材の落下や塀の倒壊で通行人や隣家に被害が出ると、所有者が損害賠償を求められるおそれがあります。
火災保険や個人賠償責任保険が空き家に使えるかは、契約によって違います。空き家になったことを保険会社や代理店に伝え、補償の範囲を確かめてください。
3. 改正空家法と固定資産税|管理不全空家から特定空家までの段階
2023年12月13日に改正空家法が施行されました。それまで市区町村が指導できたのは、倒壊の危険が高いなどの「特定空家」だけでした。
改正で、そのまま放置すれば特定空家になるおそれのある空き家も「管理不全空家」として指導の対象になりました。国土交通省は「特定空家予備軍」と説明しています。
指導から勧告、命令、代執行までの流れ
空家法13条により、市区町村長は管理不全空家の所有者に、管理指針に沿った措置をとるよう指導できます。改善されなければ、修繕や立木の伐採などを勧告できます。
| 段階 | 市区町村の措置 | 住宅用地特例 | 令和6年度の件数 |
|---|---|---|---|
| 管理不全空家 | 指導 | 続く | 2,545件(151市区町村) |
| 管理不全空家 | 勧告 | 外れる | 378件(40市区町村) |
| 特定空家 | 助言・指導 | 続く | 4,026件(387市区町村) |
| 特定空家 | 勧告 | 外れる | 600件(158市区町村) |
| 特定空家 | 命令 | 外れたまま | 101件(44市区町村) |
| 特定空家 | 行政代執行など | 外れたまま | 行政代執行71件、略式代執行81件、緊急代執行9件 |
出典:国土交通省・総務省「空家等対策の推進に関する特別措置法の施行状況等について(令和7年3月31日時点)」。
特定空家への命令に違反すると、50万円以下の過料の対象になります。命令に従わない場合などは、市区町村が代わりに取り壊す「代執行」に進むことがあります。
住宅用地特例とは|税の土台が6分の1・3分の1になる仕組み
住宅が建っている土地は、固定資産税の課税標準(税額を計算する土台の額)が軽くなります。これを住宅用地特例といいます。
- 小規模住宅用地(200㎡以下の部分):課税標準が評価額の6分の1
- 一般住宅用地(200㎡を超える部分):課税標準が評価額の3分の1
地方税法349条の3の2は、勧告を受けた管理不全空家と特定空家の敷地を、この特例の対象から外しています。空き家になっただけで特例が外れるわけではありません。
ただし総務省の通知では、居住に必要な管理を怠っていて今後住む見込みがない場合なども、特例の対象となる住宅に当たらないとされています。判断は市区町村が行います。
計算例|特例が外れると税額はどれくらい変わるか
次の前提で、特例がある場合と、外れて課税標準が上限まで上がった場合を比べます。
- 土地の面積150㎡(全体が小規模住宅用地)
- 土地の固定資産税評価額1,200万円
- 税率は標準税率の1.4%。都市計画税は含めない
| 項目 | 特例あり | 特例が外れ、上限に達した場合 |
|---|---|---|
| 課税標準 | 1,200万円×1/6=200万円 | 1,200万円×70%=840万円 |
| 土地の固定資産税(年) | 2万8,000円 | 11万7,600円 |
| 差額(年) | - | 8万9,600円(約4.2倍) |
総務省の説明では、住宅用地以外の宅地は、課税標準が評価額の70%を上限に、前年度の額などから調整して決まります。初年度から上限になるとは限りません。
「6倍になる」と言われることがありますが、上の仕組みのため単純に6倍にはなりません。実際の税額は、市区町村の資産税の窓口で確かめてください。
国の調査では、管理不全空家の勧告で特例が外れる措置を「知らない」所有者が55.1%いました。勧告の前には指導があるので、通知が届いたら放置せずに窓口へ連絡しましょう。
固定資産税の納税通知書の宛先や、相続人の間での負担の分け方は「実家の固定資産税は誰が払う?」で整理しています。
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4. 空き家の管理の頻度|月1回が多数派、遠いほど下がる
管理指針は「一定の頻度で点検」と書いており、何か月に1回という数字は示していません。そこで、実際の所有者がどのくらいの頻度で管理しているかを見ます。
管理している人の約7割が月1回以上
令和6年空き家所有者実態調査では、管理者がいる空き家のうち「月に1〜数回」が34.0%で最も多くなりました。ほぼ毎日(17.7%)と週に1〜数回(19.1%)を合わせると、月1回以上は約7割です。
一方で「年に1〜数回」も27.6%ありました。管理しているのは所有者や親族が約9割で、業者などは3.8%です。
実家までの時間で、管理の頻度は大きく変わる
同じ調査を、所有者の住まいから空き家までの片道の時間別に見ると、遠いほど頻度が下がっています。
| 空き家までの時間 | 月1回以上 | 年に1〜数回 | 数年に1回 |
|---|---|---|---|
| 徒歩圏内 | 81.4% | 17.4% | 1.2% |
| 車・電車などで1時間以内 | 73.2% | 25.1% | 1.6% |
| 車・電車などで1時間超〜3時間以内 | 54.2% | 44.7% | 1.3% |
| 車・電車などで3時間超 | 42.6% | 53.9% | 3.5% |
出典:国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査結果」図表4-73。月1回以上は「ほぼ毎日」「週に1〜数回」「月に1〜数回」を当サイトが合計しました。
片道3時間を超えると、半数以上が年に数回の管理になっています。頻度を保てないと分かった時点で、家族の分担か外部への委託を考えるのが現実的です。
当サイトの目安|毎月・季節ごと・災害の後
国の指針と調査をふまえ、当サイトでは次の3つの頻度で考えることをおすすめしています。数字は編集部の目安で、家の状態や地域で調整してください。
- 毎月1回:通風・換気、通水、郵便物の整理、外回りの目視点検
- 季節ごと:草取りと庭木の剪定、雨どいの掃除、冬の水道の凍結対策
- 災害の後:地震、強風、大雨、大雪の後の見回り
管理指針は、地震や台風、大雨、大雪の後に、破損などが生じていないかを確認する必要があるとしています。強風や大雨の前に、部材がはがれかけていないかを見ておくことも望ましいとしています。
維持管理にかかる年間の費用
国の調査では、税金や交通費、委託料を含む年間の維持管理費は「10〜20万円未満」が16.7%で最も多くなりました。5万円未満も合わせて約5割あります。
たとえば往復の交通費が1回6,000円なら、月1回で年7万2,000円です(仮定の試算)。通う回数と距離が、費用を大きく左右します。
5. 庭木・外回りの管理|草刈り・剪定・塀と擁壁

国の調査で、管理している人が最も多く行っていたのは「外回りの清掃、草取り、剪定など」で79.5%でした。近所の人の目に最初に入るのも、建物の外回りです。
草と庭木は「はみ出し」を最優先で防ぐ
管理指針は、立木の枝が周囲の建物を傷つけたり、歩行者の通行を妨げたりしないよう、定期的な剪定を求めています。隣地や道路にはみ出した枝は、苦情の原因になりやすい点です。
大きな木は、幹の腐れや傾きも見ます。大枝が折れていたり、幹が腐っていたりすれば、伐採や補強を検討します。高所の作業は危険なので、造園業者などに頼みましょう。
雑草は、夏の生育期に一気に伸びます。草取りの回数を春から秋に増やし、防草シートや砂利で手間を減らす方法もあります。
塀・門・擁壁は傾きとひび割れを見る
国土交通省のチェックリストは、門や塀、屋外階段の傾きや破損、擁壁のひび割れを点検項目にしています。地震で倒れると、通行人を巻き込むおそれがあります。
擁壁(がけや段差を支える壁)がある場合は、水抜き穴の清掃も必要です。穴が詰まると、水がたまって擁壁に負担がかかります。
6. 防犯と郵便物の管理|戸締まり・ポスト・不審な荷物

国の調査では、管理面の心配事として「不審者の侵入や放火」を挙げた所有者が51.7%いました。人の気配がない家は、侵入や放火のきっかけを作りやすくなります。
郵便物とチラシをためない
郵便受けにチラシがあふれていると、外から見て空き家だと分かります。管理指針も、日常的な管理として定期的な郵便物等の確認・整理を挙げています。
届いた郵便物には、固定資産税や公共料金の通知が含まれることもあります。親あての郵便物の転送などの扱いは、最寄りの郵便局で確かめてください。
国土交通省の管理受託ガイドラインは、人の出入りが少ない空き家が、特殊詐欺の現金送付先に使われる例があると注意しています。見覚えのない荷物や不在票があれば、警察への相談も考えます。
窓と扉の破損は早めに直す
チェックリストは、不法侵入につながるような窓の破損がないかを点検項目にしています。割れた窓を放置すると、人が出入りできる状態になります。
- すべての窓と勝手口の施錠
- 雨戸やシャッターの破損
- 侵入された形跡(足跡、こじ開けた跡、たばこの吸い殻など)
- 物置や車庫の施錠
燃えやすいもの(古新聞、段ボール、枯れ草)を家の周りに置かないことも、放火への備えになります。
7. 室内の点検|換気・通水・雨漏りと劣化のサイン

締め切った家は湿気がこもり、カビや木材の腐れが進みます。管理指針は、倒壊などを防ぐために定期的な通気や換気が必要だとしています。
訪問したら、まず窓と押し入れを開けて空気を入れ替えます。対角線上の窓を開けると風が通りやすくなります。
通水|排水口の「封水」を切らさない
台所、洗面所、浴室、トイレの排水口には、水をためて下水の臭いや虫を止める仕組み(封水)があります。長く使わないと水が蒸発し、臭いが上がってきます。
チェックリストは、排水設備の封水切れによる悪臭がないかを点検し、封水を注入するよう求めています。訪問のたびに各蛇口から水を流しましょう。
寒冷地や冬の冷え込みが強い地域では、水道管の凍結に注意します。管理指針は、冬期に給水管の元栓を閉めることを日常的な管理の例として挙げています。
電気・水道・ガスを止めるかどうか
国土交通省の管理受託ガイドラインは、通電・通水を続けるかは物件の状況によるとしています。続ければ換気扇や照明が使えますが、漏電や漏水の危険と基本料金がかかります。
ガスは、空き家の管理で使う場面が少ないため、閉栓するのが一般的とされています。止め方や再開の手順は「実家の電気・水道・ガスの手続き」で詳しく説明しています。
雨漏りと構造の傷みのサイン
雨漏りは、天井や壁のしみ、床のふくらみで気づくことが多い不具合です。チェックリストは、柱やはりの破損・腐れ、雨漏りの跡がないかを室内の点検項目にしています。
- 天井・壁の雨じみ、カビ、はがれ
- 床のきしみ、沈み、ふくらみ
- 柱やはりの腐れ、シロアリの跡
- 建具の開け閉めが急に重くなった
- 押し入れや北側の部屋のカビ臭さ
外からは、屋根材のずれやはがれ、軒の傾き、外壁のひびを見ます。国の調査では、1950年以前に建てられた空き家の39.1%で構造上の不具合が生じていました。
家財が多いと点検の手間が増えます。片付けの進め方は「実家じまいの順番」を参考にしてください。
8. 空き家管理チェックリスト|1回の訪問で確認すること
国土交通省の「空き家管理チェックリスト」と管理指針の項目を、訪問のときに使いやすい形にまとめました。頻度の欄は当サイトの目安です。
| 場所 | 確認すること | 見つけたときの対応 | 頻度の目安 |
|---|---|---|---|
| 室内 | 通気・換気、カビや湿気 | 窓と収納を開けて換気する | 毎回 |
| 室内 | 排水口の臭い(封水切れ) | 各蛇口から水を流す | 毎回 |
| 室内 | 天井の雨じみ、柱・はりの腐れ | 補修や防腐処理を依頼する | 毎回 |
| 外観 | 建物全体の傾き、屋根の変形 | 専門業者に点検を依頼する | 毎回(目視) |
| 外観 | 屋根材・外壁のはがれや破損、軒の傾き | 撤去や補修を依頼する | 毎回(目視) |
| 外観 | 窓の破損、侵入の形跡 | 補修し、施錠を確かめる | 毎回 |
| 敷地 | 郵便物・チラシ | 回収し、重要な通知を確かめる | 毎回 |
| 敷地 | ごみの散乱、悪臭 | 清掃する | 毎回 |
| 敷地 | 枝のはみ出し、幹の腐れ、雑草 | 剪定・伐採・草取りをする | 季節ごと |
| 敷地 | 門・塀・擁壁の傾きやひび、水抜き穴 | 補修を依頼し、穴を清掃する | 毎回(目視) |
| 敷地 | 動物の棲みつき、ふん | 駆除を依頼する | 毎回 |
| 設備 | 浄化槽の破損、給水管の凍結 | 補修する。冬は元栓を閉める | 冬期・随時 |
| 全体 | 地震・台風・大雨・大雪の後の被害 | 見回り、必要なら応急処置 | 災害の後 |
点検した日、気づいた点、撮った写真を記録しておくと、相続人の間で状態を共有できます。売却や解体を相談するときにも、建物の状態を説明する材料になります。
9. 管理を頼む場合|家族・管理業者・自治体の相談窓口

国の調査で、管理の課題として最も多かったのは「管理の作業が大変」(31.7%)でした。「遠方に住んでいるので往訪が困難」も21.6%あります。
自分で通えない場合の頼み先は、主に次の4つです。
| 頼み先 | 向いている場合 | 確認すること |
|---|---|---|
| 近くに住む家族・親族 | 相続人の中に近くに住む人がいる | 交通費や手間の分担、鍵の管理 |
| 空き家管理業者・不動産会社 | 遠方で月1回の訪問が難しい | 作業内容、頻度、報告方法、責任の範囲 |
| 空家等管理活用支援法人 | 市区町村が指定した法人に相談したい | 実家のある市区町村で指定があるか |
| 市区町村の空き家相談窓口 | 管理か売却か、方針から相談したい | 対象者、相談日、予約の要否 |
空家等管理活用支援法人は、改正空家法でできた制度です。市区町村が、空き家の活用や管理に取り組むNPO法人や会社などを指定し、所有者の相談に応じます。令和7年3月末時点で、64市区町村が95法人を指定していました。
管理業者と契約するときの確認点
国土交通省は、令和6年6月に「不動産業者による空き家管理受託のガイドライン」を公表しました。契約書で定めることが想定される事項として、次のものを挙げています。
- 管理に係る作業の内容と頻度
- 報酬と、支払いの時期・方法
- 再委託の有無と再委託先
- 責任と免責の範囲
- 作業完了の報告方法
- 契約期間、更新、解除
- 動かせない家財の取り扱い
同じガイドラインは、契約前に建物の中と敷地を一緒に確認し、傷みや家財の状況を書面に残すことが有効としています。
完了報告は、作業からおおむね1週間以内に写真や動画で受ける例が示されています。異常があれば、報告を待たずに連絡してもらう取り決めも大切です。貴重品は、契約前に運び出しておきます。
費用は、作業内容や地域、頻度で大きく変わります。国の公的資料に管理サービス料金の相場は見当たらないため、複数の業者から同じ条件で見積もりを取って比べてください。
兄弟で共有している場合
同ガイドラインは、定期的な巡回や通風・換気を、民法上の保存行為(財産の現状を維持する行為)に当たると考えられるとしています。保存行為は、共有者の一人が単独でできます。
ただし費用の分担や、修繕・売却の判断は、共有者で話し合う必要があります。進め方は「相続人が複数いる実家の進め方」で整理しています。
当サイトの市区ページに載っている自治体の支援
当サイトの市区ページで紹介している、空き家の管理に関わる自治体の窓口や支援の例です。内容は各ページの確認時点のもので、利用前に自治体の最新情報を確かめてください。
- 千葉県市原市:市がNPO法人空家・空地管理センターに委託する「空き家まるごと相談窓口」があります。市内に空き家を持つ人や、相続で引き継ぐ予定の人が対象で、相談は無料です。専任相談員が、費用の概算、管理方法、専門家の紹介などを行います。
- 東京都台東区:区の「空き家に関する総合相談窓口」があり、区外に住む相続人も対象を確かめて利用できます。宅地建物取引士、建築士、弁護士または司法書士の3名が相談に応じます。
- 神奈川県秦野市:空家バンクへの登録を条件に、家財整理や樹木剪定などの費用を3分の1、上限12万円まで補助する「適正管理促進補助」があります。
- 神奈川県横須賀市:まちなみ景観課の相談窓口が、相続後の空き家を含む活用・管理の相談を受け、関係団体を紹介しています。
10. 管理を続けるか手放すか|判断の目安と次の一歩
管理は、使い道が決まるまでの「つなぎ」です。基本指針も、当面、活用や除却ができない場合に、所有者が適切に管理することが重要としています。
国の調査で、管理の課題に「住宅を利用する予定がないので管理しても無駄になる」を挙げた所有者は27.1%いました。使う予定がないなら、管理を続ける期間を区切って考えるのも一つの方法です。
判断の目安になる4つの問い
- 5年以内に、家族の誰かが住む・使う予定はあるか
- 月1回の訪問を、誰が、いつまで続けられるか
- 維持費(税金・交通費・光熱費・修繕費)を年額で払い続けられるか
- 雨漏りや傾きなど、大きな修繕が近いうちに必要か
どれかに「いいえ」が並ぶなら、売る、貸す、解体する、の選択肢を比べる時期です。相続人の誰か一人が抱え込まず、数字を共有して決めましょう。
手放す選択肢と関連記事
| 選択肢 | 主な確認点 | 関連記事 |
|---|---|---|
| 売る | 相続登記、査定、3,000万円控除の期限 | 相続した実家の売却 |
| 解体する | 解体費、補助金の着工前申請、更地の税負担 | 実家の解体 |
| 空き家バンクに出す | 登録条件、自治体の補助との組み合わせ | 空き家バンクの使い方 |
| 相続をしない | 家庭裁判所への申述の期限、放棄後の管理の扱い | 相続放棄と実家 |
被相続人が一人で住んでいた家を売る場合、要件を満たせば譲渡所得から最大3,000万円を控除できる特例があります。期限があるため、管理を続けるか迷う段階で「空き家の3,000万円控除」の要件を確かめておきましょう。
売ると決める前でも、査定額を知っておくと、管理費と比べる材料になります。
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買取と仲介は、手取り額と売れるまでの期間の考え方が違います。相続人の合意と名義の状況を確認してから、条件を比べてください。
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相場に近い価格で売りたい場合(仲介)※東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県の物件が対象
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【関連】地域ごとの制度と相談先を調べる
空き家の相談窓口や管理・解体の補助は、実家のある市区町村で違います。1都3県の制度は、都県別のガイドから確認できます。
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よくある質問
空き家の管理は、どのくらいの頻度で行えばよいですか?
国の管理指針は「一定の頻度で点検」としており、具体的な回数は示していません。国の調査では管理している人の約7割が月1回以上でした。当サイトでは、月1回の通風・通水・外回り点検と、災害の後の見回りを目安にしています。
空き家を放置すると、固定資産税は上がりますか?
空き家になっただけでは、住宅用地特例は外れません。管理不全空家や特定空家として市区町村から勧告を受けると、土地の特例が外れて税額が上がります。勧告の前には指導があるので、通知が届いたら窓口に相談しましょう。
遠方に住んでいて通えない場合は、どうすればよいですか?
近くに住む親族に頼むか、空き家管理業者や不動産会社に委託する方法があります。市区町村が指定する空家等管理活用支援法人や、自治体の空き家相談窓口に相談することもできます。契約では作業内容、頻度、報告方法、責任の範囲を書面で確かめてください。
空き家の電気や水道は止めたほうがよいですか?
物件の状況によります。通電・通水を続けると換気や通水がしやすい反面、漏電・漏水の危険と基本料金がかかります。寒い地域では、冬に給水管の元栓を閉めて凍結を防ぐことが、国の管理指針で日常的な管理の例とされています。
兄弟で共有している空き家を、一人の判断で管理業者に頼めますか?
国土交通省のガイドラインは、定期的な巡回や通風・換気を民法上の保存行為と考えられるとしており、共有者の一人が単独でできます。ただし費用の分担や修繕・売却の判断は、共有者で話し合って決める必要があります。
まとめ
空き家の管理は、所有者が行うのが基本です。月1回を目安に、換気、通水、郵便物の整理、外回りの点検を続けましょう。災害の後は、その都度見回ります。
放置して管理不全空家や特定空家として勧告を受けると、土地の固定資産税の住宅用地特例が外れます。国の調査では、この措置を知らない所有者が半数を超えていました。
遠方で通えないときは、家族の分担、管理業者、自治体の相談窓口を比べます。管理が続かないと分かったら、売却や解体も含めて家族で方針を決めましょう。
一次情報・参考資料
- 国土交通省 空き家対策特設サイト「空き家の管理のやり方」、「空き家を放置するリスク」、「空家法とは」(確認日:2026-10-01)
- 国土交通省「空き家管理チェックリスト」(確認日:2026-10-01)
- 総務省・国土交通省「空家等に関する施策を総合的かつ計画的に実施するための基本的な指針」三 管理指針(最終改正 令和8年9月3日、確認日:2026-10-01)
- 国土交通省「管理指針、管理不全空家の参考基準」概要資料、「固定資産税等の住宅用地特例に係る空き家対策上の措置」、地方税法(抄)(確認日:2026-10-01)
- 国土交通省「空家等管理活用支援法人」制度概要、国土交通省・総務省「空家等対策の推進に関する特別措置法の施行状況等について」(令和7年3月31日時点、確認日:2026-10-01)
- 衆議院「空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律案」、「空家等対策の推進に関する特別措置法」制定時の本文(確認日:2026-10-01)
- 国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査結果」(令和7年8月公表、基準日:令和5年10月1日ほか、確認日:2026-10-01)
- 国土交通省「不動産業者による空き家管理受託のガイドライン」(令和6年6月、確認日:2026-10-01)
- 総務省「固定資産税」(確認日:2026-10-01)
- 総務省統計局「令和5年住宅・土地統計調査 住宅及び世帯に関する基本集計(確報集計)結果の概要」(2023年10月1日現在、確認日:2026-10-01)
