本ページはプロモーションを含みます。
結論から言うと、実家だけを相続放棄することはできません。放棄すると、預貯金も借金も含めて親の財産をすべて引き継がないことになります。
期限は、自分が相続人になったと知った時から原則3か月です。2023年4月の民法改正で、放棄した後に実家を守る義務を負うのは、放棄の時に実家を「現に占有」していた人だけになりました。放棄を考えているうちは、家財の処分や解体を始めないでください。
民法の条文、裁判所の手続案内、法務省の改正資料をもとに、次の順で整理します。
- 相続放棄すると実家は誰のものになり、最後はどうなるか
- 放棄の判断基準と、3か月の期限の延ばし方
- 放棄前にしてよいこと・いけないこと(自分の荷物、片付け、解体)
- 改正後の「保存義務」は誰が、いつまで負うのか
- 申述の費用と必要書類、相続して売る・国に引き取ってもらう場合との費用比較
1. 相続放棄とは|実家だけを手放すことはできない
相続放棄は、家庭裁判所に申し出て、相続人の立場から外れる手続きです。民法938条は、放棄する人は「その旨を家庭裁判所に申述しなければならない」と定めています。
兄弟の間で「私は何もいらない」と話しただけでは、法律上の放棄にはなりません。
放棄の効果は「初めから相続人ではなかった」
民法939条は、放棄をした人は「初めから相続人とならなかったものとみなす」と定めています。土地や建物、預貯金といったプラスの財産も、借金や未払いの税金も、まとめて引き継がないことになります。
そのため「実家は要らないが、預金は受け取りたい」という選び方はできません。実家だけを手放したいなら、いったん相続したうえで売る、国に引き取ってもらうといった別の方法を考えます(8章)。
相続人が選べる3つの道
裁判所は、相続が始まったときの選択肢を次の3つに分けて案内しています。
| 選択肢 | 内容 | 手続き |
|---|---|---|
| 単純承認 | 土地の所有権などの権利も、借金などの義務もすべて引き継ぐ | 家庭裁判所への手続きは不要。3か月以内に何もしなければこれになる |
| 相続放棄 | 権利も義務も一切引き継がない | 各相続人が単独で家庭裁判所に申述する |
| 限定承認 | 相続で得た財産の範囲内でだけ、借金を負担する | 相続人全員が共同して家庭裁判所に申述する |
放棄は一人ずつできますが、限定承認は相続人全員がそろわないと申述できません(民法923条)。
データで見る|相続放棄の申述は年30万件を超えた
最高裁判所の司法統計年報によると、家庭裁判所が新たに受け付けた相続放棄の申述は、令和6年に30万8,750件でした。平成17年の14万9,375件と比べると、約2.1倍です。
| 年 | 相続放棄の申述の受理(新受件数) | 相続財産清算人選任等(新受件数) |
|---|---|---|
| 平成17年 | 149,375件 | 10,736件 |
| 平成27年 | 189,296件 | 18,618件 |
| 令和元年 | 225,416件 | 21,751件 |
| 令和3年 | 251,994件 | 27,207件 |
| 令和5年 | 282,785件 | 28,639件 |
| 令和6年 | 308,750件 | 28,330件 |
相続人がいない財産を清算する「相続財産清算人」の選任などの申立ても、約2.6倍に増えました。全員が放棄した実家が清算に回る場面も増えていると考えられます(統計からの見立て)。
出典:最高裁判所「令和6年 司法統計年報 3 家事編」第2表・第3表。新受件数は申述・申立ての件数で、人数や世帯数とは一致しません。倍率は当サイトが計算しました。
2. 相続放棄すると実家はどうなる|次の相続人から国庫まで
放棄すると、その人を除いて相続人を数え直し、次の人が実家を引き継ぎます。
相続権は次の順位へ移る
民法の定める相続人の順番は、次のとおりです。配偶者は常に相続人で、下の順位の人と並んで相続します(民法890条)。
- 第1順位:子(子が先に亡くなっていれば孫)(民法887条)
- 第2順位:父母・祖父母などの直系尊属(民法889条1項1号)
- 第3順位:兄弟姉妹(亡くなっていればおい・めい)(民法889条1項2号)
たとえば、母が亡くなり父は先に他界、子が3人という家族を考えます。子3人が全員放棄すると、母の両親が健在ならその人へ、いなければ母の兄弟姉妹へ相続権が移ります。
次の順位の人の3か月は、自分が相続人になったと知った時から始まります。借金を理由に放棄するなら、おじ・おばにも事情を伝えておきます。
兄弟の一人だけが放棄した場合
兄弟のうち一人だけが放棄すると、残りの兄弟の相続分が増えます。法務省の改正説明資料では、放棄した人を除いた法定相続分の割合で、相続開始の時にさかのぼって共有になる例が示されています。
このとき、残った相続人は、その放棄を知った日から3年以内に、放棄後の割合で相続登記を申請する義務を負うとされています。相続登記の義務化は相続登記の義務化と期限で詳しく扱っています。
「長男が実家を継ぐから、ほかは放棄する」という使い方もありますが、放棄すると預貯金も受け取れません。分け方を決めたいだけなら遺産分割協議で足ります。相続人が複数いる実家の進め方も参考にしてください。
全員が放棄したら相続財産清算人、最後は国庫へ
相続人全員が放棄して相続する人がいなくなると、家庭裁判所が申立てを受けて「相続財産清算人」を選びます。裁判所は、全員が放棄した場合もこの手続きの対象だと案内しています。
清算人は、親の債権者への支払いなどをして財産を清算します。必要があれば、裁判所の許可を得て不動産を売却し、お金に換えることもできます。清算後に残った財産は国庫に引き継がれます(民法959条)。
申立てができるのは、債権者などの利害関係人と検察官です。2023年12月施行の改正空家法では、市区町村長にも財産管理人の選任請求が認められました。国土交通省は、相続放棄された空き家への対応と説明しています。
3. 放棄するかどうかの判断基準|財産と借金を調べる

放棄は3か月の期間内でも撤回できません(民法919条1項)。印象だけで決めず、まず財産と借金を一覧にします。
民法915条2項は、相続人は承認や放棄をする前に「相続財産の調査をすることができる」と定めています。通帳や郵便物で財産を調べることは、条文が認めている行為です。
調べる財産と借金のリスト
| 区分 | 主な項目 | 手がかりになる資料 |
|---|---|---|
| 不動産 | 実家の土地・建物、ほかの土地 | 固定資産税の納税通知書、登記事項証明書 |
| 預貯金・有価証券 | 銀行口座、証券口座 | 通帳、キャッシュカード、取引報告書 |
| 借金 | 住宅ローン、カードローン、知人からの借入 | 返済予定表、督促状、契約書 |
| 保証 | 親が連帯保証人になっている契約 | 保証契約書、債権者からの通知 |
| 未払い | 固定資産税・住民税の滞納、医療費、施設利用料 | 市区町村からの通知、請求書 |
借金の残高は、通知の差出人に照会すると分かることがあります。支払いは方針が決まってから考えます。
実家が「負の財産」になるかを見極める
借金がなくても、実家そのものが重荷になることがあります。売れるか(立地・傷み・境界)、持ち続ける費用(固定資産税・修繕・草刈り)、手放す費用(解体・家財処分・測量)の3つで見ます。
売却の見込みがあるなら、相続して売るほうが手元に残る可能性があります。借金が財産を明らかに上回るなら、放棄を検討する理由になります。どちらとも言えないときは専門家に相談します。
限定承認という中間の選択肢
限定承認は、相続で得た財産の範囲でだけ借金を払う方法です。借金の額がはっきりしないが、財産が残る可能性もある、という場面のための制度です。
ただし、相続人全員が共同して、3か月以内に財産目録をつくって申述します(民法923条・924条)。受理後は官報公告などの清算手続もあり、手間がかかります。
4. 期限は3か月|借金が後から分かったとき・期間の延長

民法915条1項は、相続人は「自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内」に、承認か放棄をしなければならないと定めています。この3か月を「熟慮期間」と呼びます。
3か月は「亡くなった日」からとは限らない
裁判所のQ&Aでは、期限の起点を、亡くなった事実と、自分が法律上の相続人になった事実を知った時と説明しています。先順位の人が放棄して自分の番が回ってきた場合は、それを知った時から数えます。
同じQ&Aには例外もあります。財産がまったくないと信じ、そう信じた相当な理由があるときなどです。この場合、財産の存在を知った時から3か月以内なら受理されることもあるとしています。何年も後に督促状が届いても、届いた日を記録して相談します。
判断が間に合わないときは期間の伸長を申し立てる
3か月以内に調べても判断できないときは、家庭裁判所に「相続の承認又は放棄の期間の伸長」を申し立てます。期限が過ぎる前に申し立てることが前提です。
| 項目 | 裁判所の案内 |
|---|---|
| 申立てできる人 | 利害関係人(相続人を含む)、検察官 |
| 申立先 | 亡くなった人の最後の住所地の家庭裁判所 |
| 費用 | 収入印紙800円分(相続人1人につき)、連絡用の郵便切手 |
| 主な書類 | 申立書、亡くなった人の住民票除票または戸籍附票、伸長を求める相続人の戸籍謄本など |
司法統計では、この伸長の申立ては令和6年に9,793件受け付けられています。
何もしないまま期限が過ぎると単純承認になる
民法921条2号により、3か月以内に限定承認も放棄もしなかった相続人は、単純承認をしたものとみなされます。つまり、借金も含めて引き継いだ扱いになります。
亡くなった日と、相続人になったと知った日をメモしておき、2か月目には方針を決めるつもりで動きます。
5. 放棄前にしてはいけないこと|家財の処分・片付け・解体
放棄を考えている間に注意したいのが、民法921条1号です。相続人が相続財産の全部または一部を「処分」したときは、単純承認をしたものとみなされます。そうなると、後から放棄はできません。
単純承認になる行為・ならない行為
条文と裁判所の案内から確かめられる範囲で整理すると、次のとおりです。条文にない具体的な行為は、事情によって判断が分かれます。
| 行為 | 扱い | 根拠・注意点 |
|---|---|---|
| 実家や預貯金など相続財産の売却・譲渡 | 単純承認とみなされる | 民法921条1号「処分」 |
| 3か月以内に放棄も限定承認もしない | 単純承認とみなされる | 民法921条2号 |
| 放棄の後に相続財産を隠す・勝手に使う | 単純承認とみなされる | 民法921条3号。次の順位の人が承認した後は除く |
| 通帳や郵便物を見て財産を調べる | 承認・放棄の前にできる | 民法915条2項 |
| 保存行為(財産の現状を保つための行為) | 単純承認にならない | 民法921条1号ただし書。どこまでが保存行為かは個別判断 |
| 短期の賃貸(建物3年・土地5年以内) | 単純承認にならない | 民法921条1号ただし書・602条 |
| 家財の廃棄、形見分け、建物の解体 | 「処分」に当たるおそれがある | 条文に個別の定めはない。始める前に専門家へ確認 |
家財を捨てる、家を壊すといった行為は、財産を失わせます。方針が決まるまでは控えるのが無難です。
実家から自分の荷物を持ち出すとき
実家に置いていた自分の衣類や本などは自分の物で、親の相続財産ではありません。引き取ることは、相続財産の処分とは別の話です。
ただし、親の物と区別がつかない物は、後で説明できなくなります。持ち出す前に写真を撮り、何を持ち出したかを一覧にしておくと安心です。親が買った家具や家電、貴金属は、自分の物だと説明できない限り手をつけないでください。
片付け・解体・売却を急がない理由
家財をまとめて廃棄すれば、価値のある物を処分したと見られる可能性があります。遺品整理と家財処分の進め方に着手するのは、方針が決まってからにします。
解体や売却の契約は、さらに影響が大きい行為です。雨漏りなど急ぎの手当てが必要なら、写真や見積書を残し、弁護士に相談してから最小限にとどめます。
6. 放棄した後の実家の管理|2023年4月改正の「保存義務」

「相続放棄しても実家の管理責任は残る」という話は、改正前の民法940条をめぐるものです。令和3年の改正で条文が変わり、2023年4月1日から新しいルールになりました。
民法940条の改正前後を比べる
| 比較点 | 改正前(2023年3月まで) | 改正後(2023年4月1日から) |
|---|---|---|
| 義務を負う人 | 相続の放棄をした者(限定なし) | 放棄の時に相続財産を「現に占有している」放棄者 |
| 義務の中身 | 財産の「管理を継続」する | 財産を「保存」する |
| いつまで | 放棄で相続人となった者が管理を始めることができるまで | 相続人または相続財産の清算人に引き渡すまで |
| 注意の程度 | 自己の財産におけるのと同一の注意 | 自己の財産におけるのと同一の注意(変わらず) |
出典:法務省「民法等の一部を改正する法律 新旧対照条文」、衆議院「民法等の一部を改正する法律(令和3年法律第24号)」。
法務省の説明資料によると、旧法では義務の発生要件や内容がはっきりしませんでした。そのため、放棄したのに過剰な負担を強いられるケースがあったとしています。
「現に占有」していた人だけが対象
改正後は、放棄の時に実家を事実上支配していた人だけが保存義務を負います。たとえば、親と同居していた子や、鍵を預かって出入りしていた子は、占有していたと評価される可能性があります。
遠方に住み、実家に関わっていなかった子は、占有していないことが多いでしょう。その場合は、940条の保存義務を負わないと考えられます。占有の有無は事実関係で決まるため、迷う場合は専門家に確認してください。
保存義務は「引き渡すまで」|何をすればよいか
保存義務は、次の相続人か相続財産の清算人に引き渡した時点で終わります。それまでは、自分の財産と同じ程度の注意で、実家の現状を保つことが求められます。
940条2項は、委任の規定(民法645条・646条・650条1項・2項)を準用しています。次の人から求められれば状況を報告し、受け取った物を引き渡します。保存のために必要な費用を出した場合は、その償還を請求できます。
全員が放棄した場合は、清算人が選ばれるまで引き渡す相手がいません。早く負担から外れたいときは、申立ての可否を弁護士に相談します。
空き家の近隣リスクと自治体の対応
所有者が決まらない間も、建物は傷みます。2023年12月13日施行の改正空家法では、市区町村長が「管理不全空家」に指導・勧告できるようになりました。放置すれば危険になるおそれのある空き家のことです。勧告を受けると、固定資産税の住宅用地特例が解除されます。
当サイトの江戸川区の空き家ページで紹介したとおり、区は管理責任や近隣に影響する空き家、樹木・ごみなど、相談内容別に窓口を案内しています。実家のある自治体の窓口も先に確かめておきます。管理の具体策は空き家の管理チェックリストにまとめています。
7. 相続放棄の手続き|申述先・費用・必要書類と相談先

相続放棄の申述は、おおむね次の流れで進みます。
- 相続人になったと知った日を記録する
- 財産と借金を調べる(間に合わなければ期間の伸長)
- 申述先を調べ、戸籍などをそろえる
- 申述書を書き、収入印紙と郵便切手を添えて提出する
- 裁判所から追加書類を求められたら提出し、受理の通知を受け取る
- 債権者や次の相続人に受理を伝え、必要なら受理証明書を取る
申述先と費用
申述先は、亡くなった人の最後の住所地の家庭裁判所です。実家の所在地や、自分の住所地ではない点に注意します。親が晩年に施設や子の家へ移っていた場合は、どこが最後の住所地かを先に確かめます。
費用は、申述人1人につき収入印紙800円分と、連絡用の郵便切手です。郵便料は裁判所ごとに異なるため、申述先の裁判所のページで確かめます。兄弟3人が放棄するなら、印紙代は800円×3人で2,400円です。
必要書類|誰が放棄するかで変わる
| 放棄する人 | 主な添付書類(標準的なもの) |
|---|---|
| 共通 | 亡くなった人の住民票除票または戸籍附票、放棄する人の戸籍謄本 |
| 配偶者・子(第1順位) | 亡くなった人の死亡の記載のある戸籍謄本。孫が代襲する場合は、本来の相続人の死亡の記載のある戸籍謄本 |
| 父母・祖父母(第2順位) | 亡くなった人の出生から死亡までのすべての戸籍謄本など |
| 兄弟姉妹(第3順位) | 上記に加え、直系尊属の死亡の記載のある戸籍謄本など |
同じ書類は1通で足ります。戸籍の代わりに「法定相続情報一覧図の写し」を出せる場合もあるため、申述先に確認します。
受理された後にすること
裁判所のQ&Aは、受理後、亡くなった人の財産を管理している場合は相続人に引き継ぐこと、債権者から請求を受けている場合は受理を連絡するのがよいことを案内しています。
受理を証明する書面が必要なときは、受理した家庭裁判所に申請します。手数料は150円分の収入印紙で、郵送なら返信用切手を添えます。
相談先の使い分け
- 借金の調査、放棄か限定承認かの判断、期限を過ぎた事情の説明:弁護士
- 申述書や戸籍の準備、相続登記:司法書士
- 相続税がかかるか、売却時の税金:税理士
- 空き家の近隣トラブル、解体の補助:実家のある市区町村の窓口
8. 放棄以外の選択肢|相続して売る・国に引き取ってもらう・解体する
借金がなく実家だけが重荷なら、放棄以外の方法も比べます。放棄すると預貯金も受け取れないからです。
費用を比べる|公的な手続き費用の一覧
| 方法 | 原文で確かめた公的費用 | ほかにかかりうる費用 | 実家の行き先 |
|---|---|---|---|
| 相続放棄 | 収入印紙800円(1人)+郵便切手。受理証明書は1通150円 | 戸籍の取得費、専門家への報酬 | 次の順位の相続人 |
| 相続財産清算人の選任申立て | 収入印紙800円+郵便切手+官報公告料5,582円 | 予納金(費用が不足するおそれがある場合に、相当額を納めることがある) | 清算後、国庫 |
| 相続して売る | 相続登記の登録免許税:固定資産税評価額×0.4% | 仲介手数料、測量費、譲渡所得の税金(条件による) | 買主 |
| 相続土地国庫帰属制度 | 審査手数料:土地一筆14,000円。負担金:原則20万円 | 建物の解体費(建物がある土地は申請できない) | 国 |
清算人の予納金は、裁判所の案内でも金額が示されていません。報酬は相続財産から払われ、足りないと見込まれるときに申立人が納めることがあります。
計算例|宅地200㎡の実家を手放す場合
前提:相続人は子3人、借金なし。実家は市街化区域の宅地200㎡で、固定資産税評価額は土地1,200万円、建物150万円とします。
- A 3人とも放棄:印紙800円×3人=2,400円+郵便切手。預貯金も受け取れず、実家は次の順位の相続人へ移る
- B 長男が相続して売る:登録免許税は(1,200万円+150万円)×0.4%=5万4,000円。売れれば代金が手元に入る
- C 長男が相続して国庫帰属:審査手数料1万4,000円+負担金約80万円(法務省が示す宅地200㎡の例)+建物の解体費
宅地の負担金は原則20万円ですが、市街化区域などの一部の宅地は面積に応じて計算されます。法務省は100㎡で約55万円、200㎡で約80万円という例を示しています。
売れる見込みがあるならB、売れない土地ならCも候補になります。実際の判断には、査定額と解体費の見積りが必要です。
相続して売る
買い手がつく見込みがあるなら、相続して売る方法が基本です。親が住んでいた家を売るときは、一定の要件を満たせば、譲渡所得から最高3,000万円を控除できる特例があります。相続人が3人以上なら、令和6年以後の譲渡は2,000万円までです。条件は空き家の3,000万円控除で確認してください。
売却の手順は相続した実家の売却チェックリストにまとめています。迷っている段階でも、査定で実家の価値を知ることは判断の材料になります。
PR|相続した実家の売却を比べたい方へ
買取と仲介は、手取り額と売れるまでの期間の考え方が違います。相続人の合意と名義の状況を確認してから、条件を比べてください。
早く手放したい・古い家のまま売りたい場合(買取)
ラクウルの不動産売却相談の案内を見る
相場に近い価格で売りたい場合(仲介)※東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県の物件が対象
ミライアスのスマート仲介で売却査定の案内を確認する
申し込み後は、内容確認の電話がかかってくることがあります。
国に引き取ってもらう|相続土地国庫帰属制度
相続した土地を、法務大臣の承認を受けて国に引き渡す制度です。2023年4月27日に始まりました。建物は引き取ってもらえません。
法務省は、建物がある土地を「申請をすることができないケース」の最初に挙げています。実家なら先に解体が必要です。境界が明らかでない土地なども対象外です。制度の詳細は相続土地国庫帰属制度の使い方で解説しています。
解体して更地にする|自治体の補助を確かめる
解体を選ぶ場合は、自治体の補助を先に調べます。当サイトの地域ページで確認した制度の例は次のとおりです。
- 江戸川区:老朽住宅除却工事助成。工事費の2分の1、通常上限50万円(対象地区または空き家は100万円)。契約・着工前に申請
- 横須賀市:空き家解体費用助成事業。税抜き対象工事費の2分の1、上限35万円。交付決定前は仮設工事も着手できない
- 八王子市:未耐震空き家除却支援補助金。相続により取得した一定の空き家が対象(令和8年度は受付終了)
いずれも、実家を取得した人などが申請することを想定した制度です。放棄した人は所有者にならないため、通常は対象にならないと考えられます(要件は各自治体に確認してください)。解体の流れと費用の見方は実家の解体チェックリストを参考にしてください。
9. ケース別|兄弟・ゴミ屋敷・住み続けたい場合の考え方
よくある迷いを整理します。事情で結論が変わるため、目安として読んでください。
兄弟で意見が分かれるとき
放棄にほかの兄弟の同意はいりません。ただし、残る兄弟の取り分と借金の負担が増えます。受理されたら兄弟に伝えておきましょう。知った日から、残る兄弟の相続登記の期限も動きます。
実家がゴミ屋敷になっているとき
物があふれた実家は片付け費用が高くなりがちです。ただ、放棄前に業者へ一括処分を頼むと、5章のとおり単純承認のリスクがあります。
近隣から苦情が来ている場合は、写真で記録し、市区町村の窓口と弁護士に相談します。
実家に住み続けたいとき
放棄すると、実家に住み続ける根拠を失います。借金があっても実家を残したいなら、限定承認など放棄以外の方法を専門家と検討します。
放棄せずに相続して手放す道もある
借金がなく実家の扱いだけが悩みなら、相続して売る方法をまず検討します。複数の会社に査定を依頼し、根拠を聞いて比べましょう。
PR|相続した実家の売却を比べたい方へ
買取と仲介は、手取り額と売れるまでの期間の考え方が違います。相続人の合意と名義の状況を確認してから、条件を比べてください。
早く手放したい・古い家のまま売りたい場合(買取)
ラクウルの不動産売却相談の案内を見る
相場に近い価格で売りたい場合(仲介)※東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県の物件が対象
ミライアスのスマート仲介で売却査定の案内を確認する
申し込み後は、内容確認の電話がかかってくることがあります。
【関連】地域ごとの制度と相談先を調べる
空き家の相談窓口や解体補助の条件は、実家のある市区町村で違います。1都3県の制度は、都県別のガイドから確認できます。
- 東京都の相続と空き家|市区別の制度と相談先ガイド
- 神奈川県の相続と空き家|市区別の制度と相談先ガイド
- 埼玉県の相続と空き家|市区別の制度と相談先ガイド
- 千葉県の相続と空き家|市区別の制度と相談先ガイド
- 江戸川区の空き家|相続後の売却・解体補助と相談先
- 横須賀市の空き家|解体補助金と相続後の売却手順
- 八王子市の空き家|相続後の売却と解体補助金を一次情報で解説
- 川越市の空き家|相続後の売却・制度と相談先
よくある質問
実家だけを相続放棄することはできますか?
できません。相続放棄をすると、初めから相続人でなかったものとみなされ、預貯金や借金も含めてすべてを引き継がなくなります。実家だけを手放したいときは、相続したうえで売却や相続土地国庫帰属制度を検討します。
相続放棄をしたら、実家の管理義務はなくなりますか?
2023年4月1日からは、放棄の時に実家を現に占有していた人だけが、次の相続人か相続財産の清算人に引き渡すまで保存する義務を負います。実家を占有していなかった人は、この義務を負わないと考えられます。
相続放棄の前に、実家から自分の荷物を持ち出してもよいですか?
自分の物は親の相続財産ではないため、引き取ること自体は処分とは別です。親の物と区別がつかない物は避け、持ち出した物を写真と一覧で記録します。
兄弟のうち一人だけが相続放棄するとどうなりますか?
放棄した人を除いた法定相続分で、残りの兄弟が実家を共有することになります。残った相続人は、その放棄を知った日から3年以内に、放棄後の割合で相続登記を申請する義務を負います。
相続放棄の期限の3か月を過ぎそうなときはどうすればよいですか?
期限内に家庭裁判所へ期間の伸長を申し立てます。費用は相続人1人につき収入印紙800円分と郵便切手です。過ぎた場合も受理される例外があるため、早めに弁護士へ相談します。
まとめ
相続放棄は、実家だけでなく親の財産すべてを手放す手続きです。期限は相続人になったと知った時から原則3か月で、家庭裁判所に申述します。費用は1人あたり収入印紙800円分と郵便切手です。
放棄を考えている間は、家財の処分や解体、売却を始めないでください。単純承認とみなされ、放棄できなくなるおそれがあります。調べる行為と、現状を保つための保存行為にとどめます。
2023年4月の改正で、放棄後に実家を保存する義務を負うのは、放棄の時に現に占有していた人だけになりました。全員が放棄すれば、相続財産清算人の手続きを経て、残った財産は国庫に入ります。
借金がなく実家だけが悩みなら、売却・国庫帰属・解体も比べましょう。迷うときは、期限を意識して弁護士や司法書士に早めに相談してください。
一次情報・参考資料
- 日本法令外国語訳DB(法務省)「民法(第四編第五編)」第915条・第921条・第938条〜第940条ほか(平成25年法律第94号までの版、確認日:2026-10-01)
- 日本法令外国語訳DB(法務省)「民法(第一編〜第三編)」第602条・第645条〜第650条(確認日:2026-10-01)
- 法務省「民法等の一部を改正する法律 新旧対照条文」第940条・第952条(PDF)(確認日:2026-10-01)
- 衆議院「民法等の一部を改正する法律(令和3年法律第24号)」(確認日:2026-10-01)
- 法務省民事局「令和3年民法・不動産登記法改正、相続土地国庫帰属法のポイント」(PDF)(令和8年4月版、確認日:2026-10-01)
- 裁判所「相続の放棄の申述」(確認日:2026-10-01)
- 裁判所「相続の承認又は放棄の期間の伸長」(確認日:2026-10-01)
- 裁判所「相続の限定承認の申述」(確認日:2026-10-01)
- 裁判所「相続財産清算人の選任」(確認日:2026-10-01)
- 裁判所「家事事件Q&A(第8 相続について)」(確認日:2026-10-01)
- 最高裁判所「令和6年 司法統計年報 3 家事編」第2表・第3表(PDF)(確認日:2026-10-01)
- 法務省「相続土地国庫帰属制度の概要」(令和5年4月24日、確認日:2026-10-01)
- 法務省 パンフレット「所有者不明土地の解消に向けて」(PDF)(確認日:2026-10-01)
- 法務省「相続登記の申請義務化について」(確認日:2026-10-01)
- 国税庁「No.7191 登録免許税の税額表」(令和8年4月1日現在法令等、確認日:2026-10-01)
- 国税庁「No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」(令和8年4月1日現在法令等、確認日:2026-10-01)
- 国土交通省「空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律」概要(PDF)(令和5年12月13日施行、確認日:2026-10-01)
