実家の相続を兄弟でする分け方|代償金の計算例と共有・調停の注意点

実家の前で今後を話し合う3人のきょうだい

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実家が遺産の中心なら、兄弟での分け方は「一人が継いで代償金を払う」「売って代金を分ける」「一人が単独で取得する」が軸です。共有名義は決定の先送りになりやすい方法です。話し合いがまとまらなければ家庭裁判所の調停へ進みます。決まった内容は遺産分割協議書にし、3年以内に相続登記をします。

この記事では、民法の条文、法務省・国税庁・裁判所の資料をもとに、兄弟で実家を相続するときの判断の順番を整理します。

  • 法定相続分・遺言・遺留分と、兄弟の取り分の考え方
  • 代償分割・換価分割・現物分割・共有の比較と、兄弟3人の計算例
  • 売って分けるときの税金と、空き家の3,000万円控除の人数要件
  • 実家に住む兄弟、介護をした兄弟、連絡が取れない兄弟がいるとき
  • 遺産分割協議書・相続登記・調停の手続と、家庭裁判所の統計
目次

1. 兄弟で実家を相続するときの前提|法定相続分・遺言・遺留分

最初に確かめるのは、誰が相続人で、遺言があるかどうかです。この2つで、話し合いの出発点が変わります。

兄弟の法定相続分は「頭数で等分」

法定相続分は、民法が定める取り分の目安です。民法900条4号は、子が数人いるときの相続分を「相等しい」と定めています。

両親がすでに亡くなり、子が3人なら、1人3分の1ずつです。親の一方が存命なら、配偶者が2分の1、子が残りの2分の1を等分します(同条1号)。

遺産分割は「全員の合意」で法定相続分と違う分け方もできる

民法907条1項により、相続人は遺言で禁止されていない限り、いつでも協議で遺産を分けられます。全員が納得すれば、法定相続分と違う割合でもかまいません。

反対に、1人でも欠けた協議は成立しません。遠方に住む兄弟、疎遠な兄弟も含めて、相続人全員で決めるのが前提です。

遺言があるときと、遺留分

遺言で「実家は長男に」と指定されていれば、原則としてそれに従います。遺言書の扱いは遺言書を見つけたときにすることで整理しています。

ただし、子には遺留分(最低限の取り分)があります。民法1042条により、子の遺留分は遺産の2分の1に、各自の法定相続分を掛けた割合です。子3人なら、1人6分の1です。

遺留分を侵害された兄弟は、侵害額に相当するお金を請求できます。法務省は、2018年の改正で遺留分の権利が金銭債権になったと説明しています。実家が共有になるわけではありません。

この請求権は、相続の開始と侵害を知った時から1年、相続開始から10年で消えます(民法1048条)。

2. 実家の分け方は4つ|代償・換価・現物・共有の比較

実家は1つしかないため、預金のように割り切れません。分け方は次の4つに整理できます。

分け方中身向いている場面注意点
代償分割一人が実家を取得し、ほかの兄弟にお金(代償金)を払う住み続ける・持ち続けたい兄弟がいる払う側に資金が要る。評価額で揉めやすい
換価分割実家を売り、代金を分ける誰も住まない・遠方に住んでいる売却の時期と価格の合意、譲渡所得の申告
現物分割実家は一人、預金や別の不動産はほかの兄弟が取る実家と釣り合うほかの遺産がある遺産の大半が実家だと差が埋まらない
共有持分を決めて兄弟全員の名義にする方針が決まらない(一時的)売却や建替えに全員の同意が要る

預金などほかの遺産が少ない場合、現物分割だけでは差が埋まりません。その場合は、代償分割か換価分割を中心に考えることになります。

選ぶ順番の目安

  1. 実家に住む人、使う予定のある人がいるか
  2. いる場合、その人が代償金を払えるか
  3. いない場合、売る時期と最低価格を兄弟でそろえられるか
  4. どれも決まらないときに、期限を決めて共有を検討する

評価額の考え方は、兄弟の間でずれやすい点です。固定資産税評価額、相続税評価額、売れる価格(時価)は、それぞれ違います。どの価格を基準にするかを、最初に決めておくと話が進みます。

3. 代償分割|一人が実家を継ぎ、ほかの兄弟にお金を払う

実家を引き継ぐ兄が妹に代償金を渡す場面

国税庁は、代償分割を「現物を取得した人が他の共同相続人に対して債務を負担する」方法と説明しています。家庭裁判所の統計でも、代償金の定めは多く見られます(「9.」で紹介します)。

計算例|兄弟3人、実家3,000万円・預金600万円

次の前提で計算します。両親はすでに亡くなり、相続人は長男・長女・次男の3人です。遺産は実家(時価3,000万円とする)と預金600万円の合計3,600万円です。法定相続分は1人1,200万円です。

項目長男長女次男
取得する遺産実家3,000万円預金300万円預金300万円
代償金1,800万円を払う900万円を受け取る900万円を受け取る
差し引きの取得額1,200万円1,200万円1,200万円

当サイトの試算です。時価は仮の数字で、実際は査定や鑑定で決めます。

長男は、1,800万円を自分のお金で用意する必要があります。払えない場合は、分割払いにする、実家の時価を見直す、換価分割に切り替える、といった調整が必要です。分割払いにするなら、金額・回数・期限を協議書に書きます。

なお、この例の遺産は3,600万円です。国税庁No.4152の基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)は、相続人3人なら4,800万円です。この前提では相続税の申告は不要になります。

代償金を払ったときの相続税の考え方

相続税がかかる遺産額の場合、代償金は課税価格の計算に反映されます。国税庁No.4173では、払った人は取得した財産から代償金を差し引き、受け取った人は代償金を加えます。

同じページの例では、相続税評価額4,000万円の土地を取得した人が、現金2,000万円を払っています。払った人の課税価格は2,000万円、受け取った人も2,000万円です。

ただし、代償金を時価(5,000万円)を基に決めた場合は、評価額と時価の比率で調整します。この例では、払った人2,400万円、受け取った人1,600万円になります。

後で売るときと、不動産で払うときの注意

国税庁の所得税基本通達38-7は、代償金として払った額は、その実家を後で売るときの取得費に入らないとしています。代償金を払ったから売却益が小さくなる、とはなりません。

また、代償金の代わりに自分の土地などを渡すと、渡した人がその時の時価で売ったものとして所得税の対象になります(No.4173)。現金以外で払うときは、事前に税理士に確認しましょう。

4. 換価分割|実家を売って代金を兄弟で分ける

誰も住まない実家は、売って分けると公平にしやすい方法です。一方で、売る時期、最低価格、片付けの費用負担をそろえる必要があります。

計算例|3,000万円で売り、兄弟3人で分ける

次の前提で、売却後の税金を試算します。売却価格は3,000万円、仲介手数料などの譲渡費用を120万円とします。親が買った時の金額は分からないものとします。

取得費が分からないときは、売った金額の5%を取得費にできます(国税庁No.3258)。この例では150万円です。譲渡所得は3,000万円-150万円-120万円で2,730万円、1人あたり910万円です。

ケース1人あたりの譲渡所得1人あたりの税額(目安)
特例を使わない(長期譲渡所得)910万円約185万円(所得税・復興特別所得税・住民税)
空き家の特別控除を使える場合(3人で取得:各2,000万円まで)0円0円

当サイトの試算です。長期譲渡所得の税率は所得税15%・住民税5%、復興特別所得税は所得税額の2.1%(国税庁No.3208)。端数処理は省いています。

相続で取得した家の所有期間は、親が取得した時から数えます(国税庁No.3270)。長く住んでいた実家なら、長期譲渡所得になることが多いでしょう。

空き家の3,000万円控除は「3人以上なら各2,000万円」

国税庁No.3306の特例は、相続した親の家とその敷地を売ったとき、譲渡所得から最高3,000万円を控除するものです。売る期限は令和9年12月31日までです。

令和6年1月1日以後の譲渡で、家と敷地を取得した相続人が3人以上なら、上限は1人2,000万円です。主な要件は次のとおりです。

  • 昭和56年5月31日以前に建てられた家であること
  • 相続の直前に、親以外に住んでいた人がいないこと
  • 売却代金が1億円以下であること
  • 相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること
  • 耐震基準を満たす、または取り壊すこと(令和6年以後の譲渡は、売った翌年2月15日までの対応も可)

人数は、家と敷地を相続で取得した相続人の数で数えます。代償分割で一人が取得した場合とは、上限が変わり得ます。兄弟の一人が親と同居していた場合は、使えないことがあります。要件の詳細は相続した空き家の3,000万円特別控除で確認してください。

相続税を払った兄弟は「取得費加算」も確認

相続税を納めた人が、申告期限の翌日以後3年以内に売ると、相続税の一部を取得費に加えられます(国税庁No.3267)。売る時期が税額に影響するので、売り出しの前に税理士へ相談しましょう。

売る前には、親の名義から相続人への相続登記が要ります。代金を誰がいくら受け取るかは、協議書に書いておきます。売却の流れは相続した実家の売却チェックリストにまとめています。

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5. 共有名義で持つ前に知っておきたいこと

「とりあえず3人の共有に」は、その場では公平に見えます。ただ、後で動かすときの同意のハードルが高くなります。

共有で決められること・決められないこと

法務省の解説によると、令和3年の民法改正(2023年4月1日施行)で、共有物の「管理」の範囲が広がりました。持分の過半数で決められることが増えています。

行為の種類例必要な同意
保存雨漏りの補修など各共有者が単独でできる(民法252条5項)
管理・軽微な変更使う人を決める、外壁の大規模修繕持分の過半数(民法251条・252条)
軽微でない変更建物の取壊し・建替えなど共有者全員(民法251条1項)
処分実家全体の売却全員がそれぞれの持分を売ることが必要

建物の取壊し・売却の扱いは、法務省資料の区分をもとにした当サイトの整理です。具体的な行為の区分は専門家に確認してください。

兄弟3人が3分の1ずつなら、2人がそろえば管理の決定はできます。しかし、売却は1人でも反対すると進みません。

共有を解消する手段はあるが、手間がかかる

共有者は、いつでも共有物の分割を求められます(民法256条)。話し合いで決まらなければ、裁判所に分割を求めます(民法258条)。改正後は、一人が取得してお金を払う「賠償分割」も条文に明記されました。

ただし、相続した直後の「遺産共有」の状態は、遺産分割の手続で解消するのが原則です。例外もあります。法務省の解説では、通常の共有と遺産共有が混ざっている場合、10年経過後は共有物分割の手続でまとめて解消できます(民法258条の2)。

共有のまま次の相続が起きると、甥・姪へ持分が広がり、話し合いの相手が増えます。共有にするなら、売る時期の目安や、使う人と費用の分担を書面にしておきましょう。解消の方法は相続不動産の共有を解消する前に確認することで詳しく扱っています。

6. 実家に住んでいる兄弟がいるとき

実家に住み続ける兄と訪ねてきた妹夫婦

親と同居していた兄弟が、そのまま住み続けたいと考える場面は少なくありません。住む側と住まない側で、見えている景色が違う点に注意が要ります。

配偶者居住権は「配偶者」だけの制度

法務省によると、配偶者居住権は、残された配偶者が亡くなった人の建物に無償で住み続けられる権利です(2020年4月1日施行)。対象は配偶者で、子や兄弟は使えません。

父が亡くなり母が存命なら、母に配偶者居住権を設定し、所有権は子が持つ形も選択肢になります。母が亡くなった後の相続では、この制度は使えません。

住んでいる兄弟の「使用料」は個別判断

改正後の民法249条2項は、共有物を使う共有者は、自分の持分を超える使用の対価を他の共有者に償還する義務を負うとしています。ただし、無償とするなどの別段の合意があれば、それに従います。

同居の経緯や親との取り決めによって、使用料を求められるかの判断は変わり得ます。ここは断定できないため、請求や支払いを決める前に弁護士へ相談してください。

話し合いでは、次の点を表にすると整理しやすくなります。

  • 住み続ける期間の見込みと、その後に売るかどうか
  • 固定資産税・修繕費・火災保険を誰がいくら負担するか
  • 代償金を払うなら、金額の根拠になる査定額
  • 払えない場合に、いつ売却に切り替えるか

7. 介護をした兄弟・連絡が取れない兄弟がいるとき

兄弟の話し合いで揉めやすいのが、介護の負担と、疎遠な兄弟の扱いです。どちらにも民法上の手当てがありますが、使える場面は限られます。

介護の負担と「寄与分」

民法904条の2は、療養看護などで親の財産の維持・増加に「特別の寄与」をした相続人に、寄与分を認めています。協議で決まらなければ、家庭裁判所が定めます。

ただし、通常の親子の助け合いを超える「特別」の寄与が要件です。令和7年の司法統計では、家庭裁判所で認容・調停成立した遺産分割は8,399件です。このうち寄与分の定めがあったのは119件でした(第51表・第53表)。

介護の日誌、通院の記録、立て替えた費用の領収書は、相続の前から残しておくと話し合いの材料になります。

相続人ではない親族の介護は「特別寄与料」

長男の妻など、相続人ではない親族が無償で介護した場合は、相続人に「特別寄与料」を請求できます(民法1050条)。2019年7月1日に施行された制度です。

協議で決まらないときは家庭裁判所に申し立てますが、相続の開始と相続人を知った時から6か月、相続開始から1年を過ぎるとできません。

連絡が取れない兄弟がいるとき

行方が分からない兄弟がいても、その人を除いて協議はできません。家庭裁判所に不在者財産管理人を選んでもらう方法があります(民法25条)。

裁判所の案内では、申立先は不在者の従来の住所地の家庭裁判所で、費用は収入印紙800円分と連絡用の郵便切手です。管理人は、家庭裁判所の許可を得て、不在者に代わり遺産分割を行えます。

財産の内容によっては、管理人の報酬などに充てる予納金を求められることがあります。連絡先が分からないだけなら、戸籍の附票で住所を調べ、手紙を送るところから始めます。

8. 遺産分割協議書と相続登記|3年以内に名義を移す

遺産分割協議書に署名・押印するきょうだい

話し合いがまとまったら、内容を遺産分割協議書にします。口約束のままでは、相続登記も売却もできません。

協議書に書くことと、実印・印鑑証明書

法務省の手続案内では、登記に使う協議書には相続人全員が実印を押し、印鑑証明書を添付します。この印鑑証明書に「作成後3か月以内」の制約はありません。

兄弟で実家を分けるときは、次の点を書き漏らさないようにします。

  • 実家(土地・建物)を登記事項証明書どおりに特定し、誰が取得するか
  • 代償金の額、支払期限、振込先、分割払いの条件
  • 換価分割なら、売却代金から差し引く費用と、分ける割合
  • 後から見つかった遺産の扱い

遠方の兄弟とは、協議書を郵送で回して署名・押印してもらう方法もとれます。書き方は遺産分割協議書と実家で例を挙げています。

相続登記の期限と登録免許税の計算

相続登記は、2024年4月1日から義務です。相続で不動産を取得したと知った日から3年以内に申請します。遺産分割で取得した場合は、分割の日から3年以内に、その内容で登記します。

正当な理由なく怠ると、10万円以下の過料の対象です。2024年4月1日より前の相続で未登記のものは、2027年3月31日が期限です(法務省Q&A)。

話し合いが3年以内にまとまらないときは、相続人申告登記で義務を果たせます。相続人の一人が単独で申し出られます。

登録免許税は、相続による所有権移転なら固定資産税評価額の1,000分の4です(国税庁No.7191)。

前提(固定資産税評価額)計算登録免許税
土地1,500万円+建物200万円1,700万円×0.4%6万8,000円
土地800万円+建物100万円900万円×0.4%3万6,000円

当サイトの試算です。課税標準は1,000円未満、税額は100円未満を切り捨てます。

令和9年3月31日までは、評価額100万円以下の土地の相続登記に免税措置があります(同No.7191)。期限の詳細は相続登記の義務化と期限をご覧ください。

9. 話し合いがまとまらないとき|遺産分割調停と「10年」の期限

家庭裁判所の調停で話し合うきょうだいと調停委員

協議がまとまらないときは、家庭裁判所に遺産分割を求められます(民法907条2項)。手続には調停と審判があり、ここでは調停を中心に説明します。

遺産分割調停の申立先と費用

裁判所の手続案内によると、調停は相続人の一人または数人が、ほかの相続人全員を相手方として申し立てます。

  • 申立先:相手方のうちの一人の住所地の家庭裁判所、または当事者が合意で定める家庭裁判所
  • 費用:被相続人1人につき収入印紙1200円分と、連絡用の郵便切手
  • 主な書類:申立書、戸籍一式、相続人全員の住民票または戸籍附票、不動産登記事項証明書・固定資産評価証明書など

話し合いがまとまらず調停が不成立になると、自動的に審判に移ります。裁判官が一切の事情を考えて分け方を決めます。

申立先は、実家の所在地ではなく相手方の住所地が基準です。実家が千葉県でも、相手の兄弟が別の県に住んでいれば、その地域の家庭裁判所になることがあります。

当サイトの市区ページにある家庭裁判所の例

当サイトの市区ページでは、地域の家庭裁判所を次のように案内しています。相続放棄は親の最後の住所地、調停は相手方の住所地が基準になる点も、各ページで注意しています。

市区市区ページに記載の家庭裁判所補足(同ページの記載)
八王子市東京家庭裁判所 立川支部(相続放棄の申述先)東京家裁の調停の郵便料は、相手方5人までなら切手2,800円または現金等3,000円
川越市さいたま家庭裁判所 川越支部川越市宮下町2丁目1番地3
柏市千葉家庭裁判所 松戸支部松戸市岩瀬無番地
小田原市横浜家庭裁判所 小田原支部小田原市本町1丁目7番9号

データで見る|家庭裁判所の遺産分割事件

最高裁判所の「令和7年司法統計年報(家事編)」から、遺産分割事件の数字を集計しました。

項目件数割合(当サイト計算)
終局した遺産分割事件(全国)16,431件-
うち東京・横浜・さいたま・千葉の各家裁2,012件・1,075件・832件・586件計27.4%
審理が1年を超えた事件5,273件32.1%
認容・調停成立のうち遺産額5,000万円以下8,399件中6,508件77.5%
認容・調停成立のうち代償金の定めあり(分割しないを除く)8,321件中5,778件69.4%

出典:最高裁判所「令和7年司法統計年報 3 家事編」第44表・第45表・第52表・第53表。割合は当サイトが計算しました。

家庭裁判所でまとまった遺産分割の約8割は、遺産額5,000万円以下でした。資産家だけの話ではありません。また、約7割で代償金の定めがあり、一人が取得してお金で調整する分け方が多いことが分かります。

相続開始から10年を過ぎると「寄与分」の主張が難しくなる

民法904条の3(2023年4月1日施行)により、相続開始から10年を過ぎた遺産分割は、原則として法定相続分(または遺言で指定された相続分)で行います。寄与分や生前贈与を考えた取り分(具体的相続分)は、原則として主張できなくなります。相続人全員が合意すれば、具体的相続分で分けることはできます。

例外は、10年が過ぎる前に家庭裁判所へ遺産分割を申し立てた場合などです。施行前に始まった相続には、2028年3月31日まで猶予があります(法務省の解説)。介護の貢献を主張したい兄弟は、時期に注意が必要です。

10. 兄弟の話し合いの進め方と相談先

手続の前に、兄弟が同じ情報を見られる状態にすると、感情的な対立を減らしやすくなります。

話し合いの前にそろえる資料

  • 戸籍一式(相続人の確定)と、遺言書の有無
  • 実家の登記事項証明書と固定資産税の課税明細書
  • 不動産会社の査定書(できれば複数社)
  • 預金・借入れの残高、葬儀費用や立替金の記録
  • 空き家の管理費用の見込み(固定資産税、光熱費、修繕費)

相続税の申告が必要な場合は、亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内が期限です(国税庁No.4205)。分割が決まらなくても期限は延びません。詳しくは相続税の申告期限をご覧ください。

相談先の使い分け

相談したいこと主な相談先
兄弟との交渉、調停・審判、遺留分の請求弁護士
遺産分割協議書の作成、相続登記司法書士
相続税、代償金の課税、売却時の譲渡所得税理士
実家の査定、売却の時期・方法不動産会社

法務局は、分け方や協議書の作成の相談には応じられないと案内しています。分け方の判断は専門家、登記の手続は法務局と、窓口を分けて考えましょう。

売るか持つかで迷っている段階でも、査定額が分かれば代償金の目安を出せます。兄弟の間で基準になる価格をそろえるために、複数の査定を取っておくと話し合いの土台になります。

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【関連】地域ごとの制度と相談先を調べる

実家の解体補助や空き家の窓口、法務局・家庭裁判所は地域ごとに違います。1都3県の制度は、都県別のガイドから確認できます。

よくある質問

実家を兄弟で相続するとき、いちばん多い分け方は何ですか?

家庭裁判所でまとまった遺産分割(令和7年、分割しないを除く8,321件)では、約7割の5,778件で代償金の定めがありました。一人が実家を取得し、ほかの兄弟にお金を払う形が多いといえます。

実家は兄弟の共有名義にしたほうがよいですか?

共有にすると、売却や建替えに全員の同意が要ります。管理は持分の過半数で決められますが、次の相続で共有者が増えるおそれもあります。共有にするなら、売る時期や費用分担を書面で決めておきましょう。

親の介護をした兄弟は多くもらえますか?

通常の扶養を超える「特別の寄与」があれば、寄与分として認められる可能性があります(民法904条の2)。ただし、令和7年に家庭裁判所でまとまった8,399件のうち、寄与分の定めがあったのは119件です。介護の記録を残し、早めに弁護士に相談しましょう。

実家に住んでいる兄弟に出て行ってもらえますか?

個別の事情で判断が分かれるため、断定できません。同居の経緯や親との取り決め、ほかの兄弟との合意内容が関わります。住み続けるなら代償分割、出るなら換価分割など、分け方とあわせて話し合い、必要なら弁護士に相談してください。

兄弟と話し合いがまとまらない場合はどうすればよいですか?

家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てます。申立先は相手方のうち一人の住所地の家庭裁判所などで、費用は被相続人1人につき収入印紙1200円分と郵便切手です。調停が不成立なら審判に移ります。

まとめ

兄弟で実家を相続するときは、まず相続人と遺言の有無を確かめます。遺言がなければ、法定相続分を目安に全員で分け方を決めます。

実家が遺産の中心なら、住む兄弟がいれば代償分割、誰も住まなければ換価分割が軸です。共有は、売る時期と費用分担を決めたうえでの一時的な選択にとどめると、後の負担を減らせます。

決まった内容は協議書にし、取得を知った日から3年以内に相続登記をします。まとまらなければ調停を検討し、相続開始から10年の期限にも注意しましょう。

一次情報・参考資料

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この記事を書いた人

株式会社アクセス・リンク代表取締役。相続と実家じまいの情報を専門に扱う「相続と実家じまいガイド」を運営しています。相続登記、空き家の売却・解体、墓じまい・改葬など、親の実家やお墓を引き継ぐ家族が直面する手続きを調べ、記事にまとめています。法務省・国税庁・自治体などの一次情報を原文で確かめ、1都3県を中心に市区町村ごとの補助制度や相談窓口を整理しています。士業ではないため個別の法律・税務相談には応じていませんが、次に何を確認し、誰に相談すればよいかが分かる情報をお届けします。

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